マスク、透明ビニールシート―。新型コロナウイルス流行で広がりを見せる感染防止対策が、聴覚障害を抱える人にとってコミュニケーションを妨げる要因になっている。口の動きや表情を読み取ることができず、意思疎通など生活に支障が出ているもので、苫小牧聴力障害者協会の酒井幹雄会長(58)は「メモや身ぶりなどで伝えてくれると大変助かる」と理解を求めている。
新型コロナ対策では政府がマスク着用とうがい、手洗いの励行を呼び掛け。コンビニや事業所の受け付けカウンターなどでは、透明のビニールシートで飛沫(ひまつ)感染防止の取り組みが進む。
酒井さんによると、買い物先でマスクを着用した店員に耳が遠いと勘違いされ、大きな声で話し掛けられるケースが増加。さらにレジカウンターに設置されたビニールシートが半透明で見えにくく、口頭説明では分からないため「シートの隙間からのぞき込んで金額を確認することもある」と話す。
コンビニなどではポイントカードの有無も確認されるが、口頭で尋ねられるため気付きにくく、飲食店を中心に進むデリバリーやテークアウトの予約注文サービスも電話が使えないため利用が難しい。酒井さんは「メモや体の動きで伝えてくれると理解しやすい。ポイントカードも見本を見せてくれるだけで分かる」と説明。テークアウトも「ファクスで注文できれば私たちも利用できる」と話す。
医療機関を受診する際は手話通訳を必要とするが、「感染リスクを懸念して通訳者を派遣してもらえなかった人もいると聞いた」と生活上でもさまざまな課題や問題があると訴える。
聴覚障害を持つ人にとってコロナ対策が新たな支障になっていることについて、酒井さんは理解を呼び掛けるとともに「事態の早期終息を願うばかり」と語っている。