駒大苫小牧高校野球部に今春、新たな指導者が就任した。2013年夏まで同部主将を務め、春季北海道大会制覇、南道大会準優勝などの実績を挙げたOBの高橋一真副部長(24)。関東学院大、2年間のJR北海道勤務と同硬式野球クラブ所属の捕手を経て、母校の社会科教員となった。後輩球児の成長、学びを後押して「チーム一丸になって甲子園出場を目指したい」と目を輝かせる。
社会人としての転機が訪れたのは昨年夏。恩師の佐々木孝介監督(33)から食事に誘われ、指導者就任の打診を受けた。まったく意外な展開に「本当に僕でいいのかな」と戸惑った後、決心。「佐々木監督や部長の高野智充先生、顧問の茶木圭介先生とまた一緒に野球ができることがうれしかった」と当時の心境を振り返った。
高校生当時、チームは夏の南道大会で2度、秋の道大会で1度トーナメント決勝まで進んだが、いずれも惜敗で甲子園出場を逃した。「7年たった今でも忘れられない悔しさ」を拭い去る覚悟だ。「指導者として母校に戻り甲子園に出場するしかないと思った」
札幌市出身。中学硬式の真駒内リトルシニアに所属していた3年時に駒大苫高の練習を見学した。父の母校札幌第一や北海といった強豪校にも足を運んだが、苫小牧で感じたことは「雰囲気が違う。心にぐわーっと響くようなものがあった」。夏の甲子園連覇を達成した名門入学を決めた。
守備位置は中学までオールラウンドの野手を務めながら、高校入学を境に強肩を買われて捕手を担った。
関東学院大では全国大会出場こそなかったが、教科を履修して教員免許を取得。卒業を迎え、「もっと野球経験を積みたい」とJR北海道硬式クの門をたたき、職場で働く社会人野球選手の気構えを身に付けてきた。「野球の技術はもちろんだけど、社会で生きていくための礼儀やマナー、感謝の心もしっかり伝えていきたい」と言う。
駒大苫野球部は新型コロナウイルスの影響で、大会連覇の懸かった春季道大会や支部大会が次々と中止になる異例の年度を迎えている。部活動も学校休校に伴って現在は停止中。「生徒たちのモチベーションが下がらないよう、心の面のケアを大切にしていきたい」と語った。
12年の秋から主将となり、心に期したモットーは「同期には厳しく、後輩たちには背中を見てついてこい」―。
当時の様子から「リーダー向きの性格だった」と認める佐々木監督は「明るい性格で、仲間にも厳しく接することができた。歴代主将の中でも秀でていた」と回顧。大学と実社会で学び、一回り大きくなって帰って来た指導スタッフ一員に「元気よく生徒と同じ目線でやれるフレッシュさが魅力。いろんな経験を積みながら成長してほしい」と期待をかけている。