機動力で頂点 投打かみ合う 苫小牧選抜が旋風吹かす-全日本少年野球大会優勝総括

  • スポーツ, 野球
  • 2020年2月12日

 第5回全日本選抜少年野球U12チャンピオン大会は8、9の両日、兵庫県淡路市の佐野運動公園第1野球場などで行われ、苫小牧選抜が本道勢として初の日本一を勝ち取って旋風を巻き起こした。選抜の旗の下に各チームから集まった小学生の成長を実感。将来、苫小牧勢の野球が飛躍する予感を抱かせる大会となった。(工藤航)

 苫小牧選抜は一昨年行われた本大会予選の道都市対抗戦で準決勝敗退と悔しさをかみしめた。今回の選抜チームを率いた石川将一監督(沼ノ端スポーツ少年団)は昨年来、「機動力野球をモットーに、チームづくりを進める」と断言していた。全体練習をする際は、走塁やバントなどのサインプレーのトレーニングを徹底的に繰り返してレベルアップを図り、昨年11~12月にかけて行われた予選では圧倒的な力で勝ち上がった。

 大舞台になっても鍛錬を積み重ねた選手たちの姿は変わることはなかった。大会の初戦はオール江津ジュニア(島根)。1点を先制されたが、セーフティーバントや盗塁など足を使った野球を展開。9―1でコールド発進した。

 初戦で横谷塁(拓勇ファイターズ)がランニング本塁打を放ってチームを勢いづけた。準決勝の岩手県選抜にも5点差で快勝した。

 対戦相手ベンチの様子を見ていると、選手やコーチングスタッフから「足速いな」「バントや守備もうまい」といった称賛の声が上がっていた。全国レベルでも通用する実力の高さの証しだろう。

 決勝では、ISクラブ選抜(石川)と激突。今大会で初めて当たる北陸勢。一筋縄ではいかないことが予想されたものの、苫小牧っ子はその想像をはるかに超える力を発揮する。

 2度のコールド勝ちや5点差勝利―。苫選抜の準決勝までの戦いぶりを知る相手はプレッシャーを受けてか、制球を乱す投手が現れ、失策、野選も散見と隙が生まれていた。

 これに対し苫選抜は平常心が光った。「自分のためだけではなく、誰かのために野球しよう」―。大一番を前に、石川監督が掛けた言葉を選手たちがしっかり実行した。

 持ち味さまざまな4枚の投手陣も機敏な継投でフル回転。主戦の矢吹太寛(沼ノ端スポーツ少年団)の制球力が発揮され、高杉景斗(日新スポーツ少年団)は何度もチームのピンチを救った。山野孝太朗(新生台イーグルス)も初戦と2回戦の試合をクローズした。打っては2試合ランニング本塁打の松尾和則(ときわ澄川ライオンズ)の球威も輝きを放った。

 監督らによると今回のメンバーは「毎日家でも練習を欠かさなかった」という努力家がそろい、機動力野球の高い意識をもって快挙を成し遂げた。

 近年、苫小牧の少年野球チーム=選手数は減少している。こうした中、選抜チームの全国優勝は野球を志す下の年代の小学生にとって格好の目標となったはずだ。2004~06年の夏の甲子園3年連続決勝に進出、2連覇の駒大苫小牧高をはぐくんだ「野球どころ」の競技底辺拡大にもつながる大躍進と言えた。指導者たちも「野球人口が増え、苫小牧のいい選手が増えていけば」と期待を募らせる。

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