久々に見た苫小牧の夜景はきれいだった。10月28日に市役所11階から眺めた。展望室がある12階の間違いではない。市議会が開かれる議場の真裏。折しも市議会はカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致をめぐる論戦の真っただ中。同僚のサポートを名目に議場に詰め、つかの間の休息を窓からの眺望に求めた。
10月から約14年ぶりに苫小牧で勤務している。幼少期から過ごし、駆け出しの頃は事件や事故を取材するいわゆるサツ担当に始まり、経済、行政と一通り経験を積んだまち。相応に思い入れがあったはずが異動で千歳や恵庭、厚真と渡り歩いているうちは住めば都で、苫小牧の魅力ある場所にも足を運ぶ機会がなくなっていた。
例えば苫小牧港・西港の漁港区。未明から早朝にかけて訪れると、漁業者の活気に満ちている。この時期は冬の味覚スケトウダラ漁の季節。刺し網から魚を取り外す作業風景は絵になる。かつては吹きさらしの暗い岸壁だったが、現在は真新しい屋根付き岸壁が風雪を防ぎ、天井からの照明も明るくて快適だ。午前5時には新鮮な海産物で知られる食堂もオープン。立派な観光資源と言い切れる。
前段の夜景もそうだ。町並みの明かりや道行く車両のライトであれば、どこのまちでも見られる光景だろう。苫小牧の夜景は北日本最大の港湾がアクセント。掘り込み式の西港水路を船舶が活発に行き交い、石油コンビナート地区の工場夜景も一望できる。道内の夜景と言えば函館や札幌のイメージがあるが、苫小牧も負けてはいない。
かつては当たり前の光景として、恥ずかしながらぼんやり受け止めていたが、しばし離れて改めて見てみると、身近なところに魅力があふれていることに驚く。ウトナイ湖に代表される自然、水揚げ日本一のホッキ貝など誇れるものが多いまちだが、身近な情報こそ意識しながら掘り起こしていきたい。
(金子勝俊)
(おわり)