11月22日、苫小牧市へのIR誘致活動を進める苫小牧統合型リゾート推進協議会の視察団に同行し、シンガポールのIR(カジノを含む統合型リゾート施設)、マリーナベイ・サンズを初めて訪れた。
5600億円を投じた200メートルの高層ビルが3棟並び、建物面積は東京ドーム約13個分(58万平方メートル)。ホテルの客室は2500室で会議場・展示場は4万5000人、宴会場は8000人をそれぞれ収容できるという。1万人が働く巨大IR施設を目の当たりにして思わず「でかい!」と声を上げた。
屋上の広大なプールで観光客がくつろぎ、ショッピングモールで買い物する人々が大勢いる。巨大なIR施設の中にカジノスペースは埋没して目立たなかった。視察してみて「家族連れで楽しめる明るいリゾート施設」だと率直に感じた。
視察から1週間後、鈴木直道知事は申請見送りを表明した。驚いた。道の試算で苫小牧市にIRを誘致すれば2万人の雇用を生み、年間で1560億円の売上と234億円の税収を見込む。だから人口減で財政難が加速する北海道が生き残るために誘致に手を挙げるだろう、知事選で大きな支援を受けたIR推進派への配慮も当然あるだろう―と考えていた。
ふたを開ければ、統一地方選でIR誘致を公約に掲げた自民党が道議会で一枚岩になれず、道庁側にも前向きな姿勢は感じられなかった。苫小牧以外の道民の関心も低かった。しかし、鈴木知事は「来るべき時には挑戦できるようにする」と断念していない。苫小牧市も推進協議会も道の動向を見守っている。まだまだ終わっていない。
日本で初めてのIR誘致に取り組む苫小牧は、チャレンジ精神にあふれていると思う。誘致に反対する組織や是非を検討する市民団体も生まれ、精力的に声を上げた。苫小牧という地域性が元気な証拠なのかもしれない。
(伊藤真史)