「一部の若い世代の女性の間で、社会に出て働きたくないから、早く結婚して配偶者に養ってもらいたいという考えが広がっているようだ」
今年、取材相手からそんな話を聞くことが幾度もあった。最初は今年初め。10代後半の娘を持つ50代女性の取材中だった。この女性は娘から、「少しでも『条件のいい』男性と職場で出会って結婚することを目的に、就職活動に励んでいる友達がいる」と教えられたという。
この時は、まれなケースだと思って気にも留めていなかったが、その後もさまざまな取材相手から同じような話を聞いた。埼玉県で8月に行われた全国規模の男女共同参画フォーラムに参加した市民も、フォーラムで出会った道外の女子大学生から聞いたこととして同様の話を市内で開かれた報告会の中で語っていた。
30代を中心に出産、育児などで離職する女性が増えて就業率が低下するいわゆる「M字カーブ」を解消するため近年、国や自治体、企業による取り組みが加速。社会情勢の変化を背景に出産後も就業を継続する女性が増え、”寿退社”や”腰掛け就職”といった言葉も聞かなくなった。
その流れに逆行し、就労に消極的な若者がいることを嘆かわしく感じるのは短絡的過ぎる。先進諸国の中で男性の家事時間が極めて短い日本において、家事負担は女性に集中。子どもが生まれると、さらに大変だ。女性は育児も一手に引き受けながら、働かなければならない。女性活躍社会が叫ばれている中、「働きたくない」と言ってのける若い女性たちは、女性の負担が増すばかりの社会に対して「NO(ノー)」を突き付けているのかもしれない。
2020年は、ジェンダー平等を目指す上での指針となる「北京宣言」が採択された第4回世界女性会議(北京会議)から25年。真の男女平等参画社会の実現が近づくような1年であることを期待している。
(姉歯百合子)