一般社団法人白老アイヌ協会理事長の山丸和幸さん(71)を話し手に招いた「フチ・エカシのお話」が16日、白老町コミュニティーセンター内の「かふぇピラサレ」で開かれた。山丸さんはアイヌ文化と関わりながら歩んだ人生について語った。
有志でつくるシラオイクンネ実行委員会(米澤諒実行委員長)が企画し、白老町のアイヌ文化伝承者などから話を聞くイベントで9月の初回に続いて開催。町民やアイヌ民族文化財団職員ら約30人が集まった。
白老で生まれ育った山丸さんは「子どもの頃、アイヌの血を引く身だということを知らなかった」とし、明治以降の同化政策を背景に親から子へ伝統文化が継承されなかった当時の社会状況を説明。「自分がアイヌの血筋とはっきり分かったのは高校入学の際、戸籍謄本を見た時。ショックを受け、コンプレックスも抱いた」と振り返った。
高校卒業後、民間企業勤務を経て観光施設ポロトコタンの土産物店で働いた。「当時は北海道観光ブーム。木彫りグマが飛ぶように売れたため、塗装が乾き切っていない粗悪品も出回っていた」と回想。35歳の頃、ポロトコタン運営法人への就職をきっかけに「アイヌ文化と深く関わるようになった」と話した。
ポロトコタンでは「当初、無我夢中で古式舞踊などを学び、観光客に披露する日々を送った」とし、「そうした仕事を通じてアイヌ民族としての自覚が生まれ、伝統文化をしっかりと受け継ぐ思いが強まった」と回顧。現在も伝承活動に努めるなど自身の歩みを伝えた。
最後に山丸さんは、来年4月開業の民族共生象徴空間(ウポポイ)で働く財団職員など、アイヌ文化の伝承に取り組もうとする参加者に対し「誇りを持ち、真摯(しんし)な気持ちで取り組んでほしい」と呼び掛けた。