善悪を問うファンタジー/「皇后の碧」を書いた/阿部智里さん

  • LA, 文芸1
  • 2025年6月3日
「読んだ人の中に何かが残る作品を書きたい」と話す阿部智里さん=東京都新宿区

 「読んだ人の中に何かが残る作品を書きたい」と話す阿部智里さん=東京都新宿区 緻密に構築したファンタジー世界と多様なキャラクターが人気の作家、阿部智里さんが最新作「皇后の碧(みどり)」を刊行した。「今を生きる中でこんなことがあるよね、でもこの主張ってこんな見方もできるよね、という『視点』への問いを盛り込んだ」。アールヌーボーをイメージした世界観で、格調高い大人のファンタジーが楽しめる。

 幼い頃にドラゴンに家族を殺され、女官として働く少女ナオミは、風の精霊で誇り高き皇帝の目に留まる。後宮に迎えられ、寵姫(ちょうき)の座を狙うべく修練に励む中、国を揺るがす大きな秘密を知る。真相を解明しようするが、数々の困難が立ちはだかり…。

 阿部さんは、作品を通じて読者に「私に世界はこう見えている。あなたにとってはどう?」と常に問い掛けているという。例に挙げるのは、親を亡くしたナオミに手を差し伸べたクジャクの王ノア。人間のナオミを大切に育てる一方、同じ鳥の種族を守ろうとナオミを冷酷な皇帝に差し出す。「一人のキャラクターを圧倒的な悪人として描いていない。物事には良い側面と悪い側面があって、一方的なジャッジはしたくないから」。見方によって異なる「善悪」を随所に描き、深みのある作品に仕上げた。

 阿部さんが作家を志したのは、「ハリーポッター」に魅了された小学校低学年の頃。それから執筆を続け、大学在学中に最年少で松本清張賞を受賞し、デビューを果たした。代表作「八咫烏(やたがらす)」シリーズは240万部超のヒットを記録する。

 自由自在なファンタジーが持ち味だが、「現実に根差している」という観点を常に持ち合わせる。「私の描く物語が、何者かに対して敬意を欠いた表現になっていないか、髪の色や肌の色など、特定の身体的特徴を持つ人を悪く描いていないか、新しい偏見を生んでいないか」。自問を続ける作家の厳格な姿勢がうかがえる。

 「皇后の碧」は新潮社刊、1980円。

 あべ・ちさと 1991年、前橋市生まれ。2012年「鳥に単(ひとえ)は似合わない」で松本清張賞、24年「八咫烏」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞。

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