石破茂首相は、立憲民主党が内閣不信任決議案を提出した場合、採決前に衆院を解散する方向で検討に入った。22日の今国会会期末を控え、立憲側をけん制する狙いがある。複数の政府・与党幹部が3日、明らかにした。夏の参院選もにらんだ与野党の攻防が激しさを増している。
与党は衆院で過半数を持っていない。政府高官は取材に「不信任案が提出されたら可決されるだろうから解散しかない」と明言。首相自身も周囲に「出たら解散する」と繰り返し伝えているという。
野党のうち、不信任案の提出に必要な51人を単独で擁するのは立憲のみ。可決されれば、首相は10日以内に衆院を解散するか、内閣総辞職しなければならない。
与党内には、2025年度予算や重要政策で野党の修正要求を受け入れざるを得なかった経緯を踏まえ、「少数与党の国会運営を続けるのは厳しい」(自民党幹部)との声が多い。報道各社の世論調査で、内閣支持率は低迷を続けているが、下げ止まりの兆しもある。政権幹部は「衆院選で現状より減ることはない」との認識を示した。
米価高騰や日米関税交渉など課題が山積する中、立憲が解散の引き金を引けば「政治空白を生じさせた」と批判できるとの計算もある。自民の鈴木俊一総務会長は3日の記者会見で、提出されれば「国民に堂々と信を問うべきだ」と主張した。
これに対し、立憲の野田佳彦代表は3日の党会合で「適時適切に判断する」と述べ、慎重に判断する考えを示した。党内では、政党支持率の伸び悩みや、衆院選の準備不足を懸念する声がくすぶる。閣僚経験者は、年金制度改革関連法案を巡る与党との修正合意に触れ、「不信任案は出さないだろう」と語った。
一方で、参院選に向けて政権側と厳しく対峙(たいじ)すべきだとの意見も根強い。小沢一郎衆院議員は記者団に「脅されて震えているようでは野党第1党の資格はない」と強調。党執行部に提出を迫った。