ガソリン定額補助開始 終了への「出口」は見通せず 消費者に恩恵も脱炭素に逆行

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  • 2025年6月5日

 政府は物価高対策として、ガソリン価格の定額引き下げを5月22日に開始した。これまでは基準となる価格を設けて、超える分を補助していたが、制度を見直し、1リットル当たり10円の定額支援に移行。ガソリン価格引き下げは消費者に恩恵をもたらす一方、化石燃料の使用を下支えすることは、国が進める脱炭素政策にも逆行する。補助金終了への「出口」もますます見通せなくなった。

 ▽170円台に低下か

 政府は2022年1月からガソリンへの補助金支給を実施している。石油元売り会社に補助金を支給する形で、給油所への卸価格を抑制し、小売価格を安くする仕組みだ。コロナ禍の収束に伴う需給の逼迫(ひっぱく)によるガソリン価格高騰への対応として、政府は「期限付き」を強調して実施してきたが、ロシアによるウクライナ侵攻や円安進行を背景に繰り返し延長されてきた。

 これまでの補助金は、原油価格の変動などを踏まえて算出するガソリンの予測価格が、基準の185円を上回る場合、超える分について全額補助し、価格を抑制してきた。

 新たな仕組みでは基準価格を設けず、定額の補助金支給に移行。急激な価格下落による流通の混乱などを防ぐため、開始当初は引き下げ幅を5円程度に抑えつつ、段階的に1円ずつ下げていき、6月中旬までに10円の価格引き下げを実現し、その後は10円補助が続く。

 全国平均のガソリン価格は最近まで185円前後で推移してきたが、新制度で170円台にまで下がることが見込まれる。

 ▽あいまいな終了時期

 ガソリン補助金については、政府はこれまで出口に向けた対応を進めてきた。昨年11月に閣議決定した総合経済対策では、補助金について「出口に向けて段階的に対応する」と明記。その方針に沿う形で、昨年12月と今年1月に補助率を段階的に縮小していた。

 トランプ米政権の高関税政策による世界的な景気減速への懸念から原油価格も下落傾向。これを受け、4月と5月にはガソリンの予測価格が基準の185円を下回り、補助金支給が0円となる週も出てきた。終了の出口は見えつつあったにもかかわらず、今回の定額支援で10円補助が決定。直近の補助金額からは大幅な増額となる。

 今回の定額支援の背景にあるのは、昨年12月の自民、公明、国民民主の3党協議でのガソリン税の上乗せ分である暫定税率の廃止に関する合意。国会での予算審議への協力を取り付ける思惑があったとみられるが、暫定税率廃止を巡る議論は深まっていない。このため石破茂首相は4月、暫定税率の扱いの結論を得て実施するまでと説明して定額支援の導入を表明した。支援の具体的な終了時期については「今の段階で、申し上げることはしない」と、あいまいだ。

 ガソリン補助金には、累計で約8兆2000億円の予算措置を講じている。定額支援は残額の1兆円程度を活用する予定だが、暫定税率廃止の実施時期が定まらなければ、補助金継続のための予算措置が再び必要となり、財政負担は増すことになる。ガソリン補助は出口の見えない迷路に入り込んだ。(時事)

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