5年に1度実施される国勢調査で、調査員の成り手確保が課題となっている。調査員の高齢化に加え、プライバシー意識の高まりやオートロックマンションの増加などに伴い、回答拒否の事例が増え、調査員にとって負担感が増していることが背景にある。総務省は改善に向け、インターネットを活用した回答の普及などに取り組んでいる。
▽「最も重要な統計」
国勢調査は国内の人や世帯の実態を把握し、さまざまな施策の基礎資料を得るために行われているもので、総務省は「日本で最も重要な統計調査」と位置付ける。調査票は、対面での配布を原則としている。
ただ、2015年調査では定員に対し調査員を確保できた割合が94.8%で、20年調査では新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり87.6%まで低下。調査員の高齢化も進み、20年調査の調査員は70歳以上が3割強を占めた。
島根県が24年5月に全国で初めて実施した実態調査によると、県内19市町村のうち14自治体が調査員を「確保できていない」と回答。確保が難しい主な要因として、不在や居留守で対面が難しかったり、調査員が警戒されて回答拒否が増えたりしていることでの精神的な負担が大きいことなどが挙げられた。
大都市部でも状況は深刻だ。オートロックマンションなどでは直接の対面が難しく、調査員が何度も訪問するケースもある。東京都の担当者は「マンションに入るため、まず調査員がマンションの管理人に説明はするが、プライバシー意識の高まりで理解してもらうのに非常に時間がかかる。共働きで日中に不在の世帯も多く、苦労することが多い」と打ち明ける。
▽目標は50%
調査員の負担軽減が求められる中、総務省は打開策の一つとして、インターネット回答を拡充。今回の25年調査では、スマートフォンなどでQRコードを読み取ることで回答システムに簡単にログインできる機能を導入する。
インターネット回答はコロナ禍の前回調査でも37.9%にとどまり、今回は50%を目標に掲げる。総務省の担当者は「オンラインで回答をもらえれば、誤記入などを精査する手間がかからない。正確な調査結果を得やすく、調査員や行政側、回答者を含めた全体の負担軽減にもなる」とメリットを強調する。
総務省はまた、オートロックマンションなどでは、関東地方の一部市町村を対象に郵送での調査票配布を試行する方針。調査員の負担軽減につながる一方、市町村にとっては郵送するための業務が加わるため、試行結果を検証して30年の調査に向けた改善点を検討する予定だ。
国勢調査 全世帯を対象に5年に1度行う統計調査。1920年に始まった。10月1日を基準日として、外国人を含む国内に住む全ての人の氏名や性別、就業先などを調べる。結果は衆院小選挙区の区割り変更や地方交付税の算定などに活用。民間企業もコンビニエンスストアの出店計画づくりなどで使っている。今回の調査結果は、2026年5月に速報値が公表される予定だ。