劇中では主人公と孫の絆も描かれる 老優の軽やかで余裕たっぷりの演技が見る者をほっこりさせる。「テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ」=公開中=は、オレオレ詐欺でお金を奪われたおばあさんを主人公に据えたアクションコメディー。撮影当時、93歳だったジェーン・スキッブが主演し、「スケールは小さいが壮大な冒険の物語」(ジョシュ・マーゴリン監督)が展開する。
夫を亡くし、近所に住む孫のダニエル(フレッド・ヘッキンジャー)のサポートを受けながら1人暮らしをしていたテルマ(スキッブ)はダニエルを名乗る電話にだまされ1万ドルの大金を巻き上げられてしまう。いったんは落ち込むものの一念発起し、老人ホームで暮らす旧友のベン(リチャード・ラウンドトゥリー)の協力を得て、お金を取り戻そうとする。
物語は今作が長編初作品となるマーゴリン監督のオリジナル。現在103歳の監督の祖母が詐欺に遭い、大金を振り込みそうになった実際の出来事がヒントになったという。監督はその際に、祖母が衰えながらも抱く「『自分らしさを保ち続けたい』という強い執念」を感じたと言い、今作の製作を通じて「祖母が残された自律心を失わないよう闘うさまを探りたかった」(公式インタビューより)と明かす。
テルマ役のスキッブは舞台出身の大ベテランで、今回が映画初主演。今作が遺作となってしまったベン役のラウンドトゥリー(代表作「黒いジャガー」)や、犯人を演じたマルコム・マクダウェル(同「時計じかけのオレンジ」)はいずれも1970年代に一世を風靡(ふうび)した俳優で、老いてなお輝く彼らの演技が作品の魅力を倍加させている。
超ベテラン俳優の生き生きとした演技が作品を支える