苫小牧市東部の住宅地で3日未明から4日朝にかけてヒグマの出没情報が相次いだ。市は苫小牧署や地元猟友会などと連携してヒグマの行方を追ったり、警戒を強めたりしたがその後新たな情報はなく、10日で1週間を迎えた。
市街地でのヒグマ出没はこれまで、植苗や桜坂町といった市内でも比較的自然豊かな地域が中心だった。今回は夜、住宅地に現れたクマが小中学校の近くや幹線道路などを徘徊(はいかい)した可能性があり、市は危機感を強めている。
3日早朝、最初の目撃現場である沼ノ端北7号公園(拓勇東町2)を、市ヒグマ防除隊のハンターらと訪れた市環境衛生部の武田涼一次長(51)に緊張が走った。滑り台や鉄棒の近くの地面に、15センチほどの足跡が点在していたからだ。「クマだとすぐに分かった。足跡のサイズから、体が大きい雄とみられる」。すぐ近隣の学校や町内会に注意喚起を促す一報を入れた。
すでに登校する子どもたちの姿もあり急きょ、公用車で巡回、見守り活動に着手した。
新開明野元町町内会で交通指導員を務める男性(81)は同日朝、新開町の国道36号の交差点に立っていたが「パトカーが走り回っていて、どうしたのかと気になっていた。帰宅後、町内会からの連絡でクマが出たと知り驚いた」と振り返る。
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苫小牧署などによると、最初の目撃情報は3日午前0時40分ごろ。同公園に西側から侵入するヒグマ1頭を近隣住民が目撃し、110番通報した。その約30分後、拓勇西町の国道36号に飛び出したヒグマがドライバーに目撃されており、市は「同一の個体」とみている。
市は同日午前10時40分ごろ、公式ラインで、ほえるヒグマのイラストを付けて「クマ出没注意」と大きく記したメッセージを発信。地域住民らに、夜間や早朝の外出を控えるよう呼び掛けた。
近隣の小中学校も一斉情報配信システムを使い、保護者に連絡。下校時間帯には教員が通学路に立ったり、車で地域を巡回したりし小学校は学年単位で時間を合わせ、一斉に帰宅する対応を取った。
同日、拓勇小まで3年生の息子を迎えに駆け付けた30代の主婦は「足跡が見つかったと聞いて、心配になった。しばらくは送り迎えを続けたい」と不安そうだった。
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翌4日朝も、同署に明野川近くのコンビニエンスストア店員から「客が川でクマを見たと言っている」と通報があり、午前中からパトカーが付近を警戒。市職員も同防除隊員と連携し、約10人態勢でパトロールやヒグマの捜索に当たった。
同日午後には市都市建設部が、明野川両岸の遊歩道の交通規制に踏み切った。本来、同河川や遊歩道は道の管轄だが、市は緊急性が高いと判断し、道の許可を得て、市職員が侵入防止柵を設置した。
SNS上では、目撃者の投稿とみられるクマの動画が拡散。住宅街の暗闇を黒い巨体が走り回り、カメラに向かってくる姿を捉えた映像で、視聴者から市や各校に問い合わせが急増した。
各校は保護者に車での児童、生徒送迎を呼び掛けたほか、放課後、児童らが校舎で親などの迎えを待つことを認めた。
市は6日まで登下校時間帯の巡回や痕跡調査を続けたが、新たな目撃情報はなく同日夜、警戒を解除。武田次長は「想定外の場所でクマが出た。今までの危機管理マニュアルを早急に見直す必要性を感じている」と気を引き締めた。
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ヒグマの出没情報がほとんどなかった地域の住宅街で目撃が続発し、市民らに大きな衝撃を与えている。市の対応を振り返りながら、今後の対策を考える。全3回。