苫信 業務改善計画を提出 外部人材招き新経営体制構築 「信頼回復へ着実に実行」

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  • 2025年6月10日
◇業務改善計画の主な内容

 苫小牧信用金庫(小林一夫理事長)は9日、北海道財務局に業務改善計画を提出した。5月9日に同局から出された業務改善命令を受け、第三者委員会や業務改善委員会を設置し、主に①経営責任の明確化②経営管理態勢の確立③法令順守態勢の確立④内部監査態勢の強化・充実―に取り組むとした。外部人材を招いての新経営体制の構築、子会社の法令違反状態解消などを盛り込み、同信金は「業務改善計画を役職員一丸となって着実に実行する」と信頼回復を誓った。

 

 第三者委員会は5月26日に設置。客観性と中立性を確保するため、同信金と利害関係のない札幌市の弁護士、八木宏樹委員長、荒木健介委員、川村明伸委員で構成。経営管理態勢や法令順守態勢が機能しなかった要因などを調べ、再発防止のために提言する。業務改善委員会も5月9日付で設置し、今月17日の総代会後の理事会で選任する理事長を委員長に据える。

 

 業務改善計画で示した主な取り組みのうち経営責任の明確化では、小林理事長ら代表理事5人全員と常勤理事1人、常勤監事1人が17日の総代会で退任する。理事や監事ら非常勤を含めて現経営陣計17人の役員報酬を月5~30%、最大3カ月間減額する他、例年6月に支給する役員賞与は全役員不支給とする。退任している元役員についても、第三者委員会の調査結果に基づき、役員報酬の一部返納を求める。

 

 経営管理態勢の確立では、総代会で新しい執行体制をスタートさせる中、金融機関の法令順守態勢や内部監査態勢に豊富な知見を有する外部人材として、信金中央金庫の監査・監事経験者を常勤監事に招聘(しょうへい)し、金庫外部からの意見を経営に反映する考えだ。

 

 また、元非常勤理事に服従する意思決定が常態化していた問題を踏まえ、同一人物が長期間同一職種にとどまれないよう見直す。理事会規程や役員定年内規など、経営管理や役員に関する規程類を改廃する考え。理事の職務執行に対する監視・監督機能も強化し、同信金は「これまで隔月で開いていた理事会を毎月開催する他、非常勤理事の個別事案に対する理解をより深め、議論に深く参加するため、資料の事前送付や事案の事前説明などを行う」などと説明する。

 

 法令順守態勢の確立では、子会社の法令違反状態を解消するため、賃貸契約の解消や売却処分などを進める方針。同信金は「精算や信金との子会社関係解消などを視野に入れ、株主の理解や協力を得ながら進めていく」と話す。

 

 同信金が保有する不動産についても、賃貸契約の解消や売却処分などを進めて適正化を図る他、コンプライアンス統括責任者を外部から招き、コンプライアンス統括部門を強化。規定類の再整備や教育体制の充実に取り組む。

 

 内部監査態勢の強化では、内部監査部門を理事長直轄とし、理事長がPDCA(計画・実行・評価・改善)に深く関わる。監査人材の育成にも力を入れ、中堅職員や支店長・部長候補者を内部監査部門に一定期間配属し、業務経験を積ませることで内部監査の資質向上を図る。

 

 信金はこの日、ホームページで業務改善計画を公表し、小林理事長は「信用を第一とする地域金融機関であるにも関わらず、信頼を損なう事態になったことを役職員一同深く反省し、地域や取引先に深くおわびする。業務改善計画を役職員一丸で着実に実行し、地域の皆さまとお客さまの信頼回復に全力で取り組む」とコメントを出した。

 

 苫小牧信用金庫への業務改善命令

 

 北海道財務局は5月9日、苫小牧信用金庫の経営管理態勢と法令順守態勢に問題があったとして、銀行法に基づき業務改善命令を出した。信用金庫が不動産関連業務を原則禁止される中、同信金は不動産の仲介行為や賃貸を行っていた他、子会社と位置付けられる不動産業を運営しているにもかかわらず、同局に事実関係を隠蔽(いんぺい)していたなどと認定した。

 

 さらに元非常勤理事が長年にわたり経営を実質的に支配し、強い発言力で法令違反に当たる業務を指示し、代表理事も違反を認識しながら服従したことを問題視。信金に不利益が生じることを認識しながら、元非常勤理事の金融資産を買い取るなどし、同局は「元非常勤理事による風通しの悪い組織文化が醸成され、独裁的な経営に過度に依存した」などと経営管理態勢の欠如を指摘した。

 

 6月9日までの改善計画提出を求めた上、計画終了まで3カ月ごとの進捗(しんちょく)と改善状況を翌月15日まで報告することを求めた。初回報告基準日は9月末としている。

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