勢いよくいけすイカを水揚げする漁師9日=午前5時5分ごろ 1日に解禁となったが不漁で水揚げがなかった道南スルメイカ漁は9日、函館市の函館漁港に今季初水揚げした。市水産物地方卸売市場でいけすイカ160キロ(昨年113キロ)の初競りを行い、最高値1キロ8300円(同8000円)のご祝儀相場で取引された。約1週間遅れで初競りを迎え、市場関係者にも安堵(あんど)感が広がった。
解禁初日の漁獲はほぼゼロで、初水揚げが行われず、1965年の市場開設以来、初めて初競りも中止に。漁師も出漁を見合わせていたが、8日に再開され、函館市漁協所属の10隻が1週間ぶりに出漁した。
9日午前5時すぎ、漁師が船内のいけすからイカをタモ網ですくい上げると、イカは勢い良く水を吐き出し、体を伸び縮みさせた。この日はイカ全体で約300キロ(同221キロ)が水揚げされた。
漁師の田原正明さん(65)は「イカが少ない。漁場では青森の漁船がみんな早々に引き返していった。先行きが不安」と話した。
函館魚市場によると、イカの重量は50~60グラムで小ぶり。同社の美ノ谷貴宏取締役営業部長は「水揚げがあって、ひと息ついた。年々スタートは魚体が小さい傾向にある。これから最盛期になるので、成長していってくれれば。今後の漁に期待したい」とした。
イカは早速、函館のスーパーや鮮魚店に並んだ。はこだて自由市場(新川町)のイカ専門店「富田鮮魚店」は、いけすイカ20キロを仕入れた。店頭であめ色に輝くイカの初物を来店客が次々と買い求めた。富田和子社長(75)は「水揚げがあって安心した。これから少しずつ量が増えてくることを期待したい。初物を待ってくれているお客がいるのでありがたい」と笑顔を見せた。
函館では、夏から秋にかけてスルメイカ漁のピークを迎えるが、近年は記録的不漁が続いている。漁期は来年1月末まで。