夫婦でバンライフ【⑩】 一時立ち止まり、見えた安心感 畑仕事や手料理で暮らす

  • 芸BS
  • 2025年6月12日
種をまき育み、芽が出てきた畑のパクチー

 種をまき育み、芽が出てきた畑のパクチー 2012年から17年にかけ、日本各地を車で巡り、バンライフを楽しんできた私たち。ただ、ここで2年ほど「立ち止まる」選択をします。

 理由の一つが、旅の帰り道、お互いの顔色の悪さやでこぼこした爪の状態から、体に対する大きな負担に気付いたこと。回帰性リウマチが完治していない夫の体調や私の不調も気がかりでした。また、相棒のバンが壊れ新しい車もゲリラ豪雨で水没。家に戻り、18年から休養と仕事に専念することにしました。

 バンライフは「動きながら出合う」ことが日常でしたが、立ち止まり初めて見えたことがありました。日々変わる光や風、自然の表情と季節の移ろい。同じ海でサーフィンを続ける中で水温の変化を感じ、気候変動の影響を実感するように。海岸でのごみ拾いでは、外国語の文字が書かれたものも。日本のごみも恐らく海流に乗って世界を巡っていると思うと、私たち一人ひとりが暮らし方に向き合う必要性を感じます。

 旅で芽生えた自給自足への意識から畑を始め、手仕事にも取り組み、草木で染めた衣類を着続けています。育てた食材を丁寧に調理して食べ、体の声を聞く。こうして暮らしを整えていくうちに、必要なものを自分たちで選び、足りないものはつくり出して育むことができるという、定住の魅力に気付きました。

 バンライフは格段に視野が広がりますが、外部環境に影響を受けやすく不安定な側面も。立ち止まった2年で感じた、自然のリズムに合わせながら、自分の意思と手で暮らしをつくる喜びと安心は、今の生きる土台につながっています。

 (ライター・米田佐和子、写真・米田将史)

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