季節を感じる 忙しい日々の中で、私たちは季節の変化をじっくり味わう余裕をなくしがちです。気付けば1年があっという間に過ぎ、春夏秋冬の美しい移ろいを見逃しているかもしれません。
茶道には四季を大切にするという考え方があり、季節の変化を細やかに感じ取ります。例えば、茶室の掛け軸やお花は、その時々の季節を映し出すものを選びます。
また、夏には涼しげな籠を、冬には温かみのある陶器の花入を使います。お菓子も春には桜、秋には紅葉を模したもので季節を楽しみます。
日常でも夏にはガラスの器を、冬にはどっしりとした厚みのある器を使い、お花を一輪飾るだけで食卓に季節を取り入れることができます。
外の景色を楽しむ時間を持つのもお勧めです。朝、窓を開けて風の匂いを感じる。散歩の途中で草花に目を向ける。夜、月や星を眺める。そうした小さな気付きを大切にすることで、自然と心が豊かになり、日常が彩りあるものに変わっていきます。
茶道のように、四季を暮らしの中に取り入れることは、ただ季節の変化を知るだけでなく、その時々の美しさを感じ、味わうことにもつながります。少し立ち止まり、身近な季節の恵みに目を向ければ日々の暮らしが豊かに感じられるのではないでしょうか。
(竹田理絵・裏千家茶道教授)