沖縄から航空自衛隊千歳基地への米軍戦闘機訓練移転問題で、市、市議会が揺れた。就任したばかりの岩倉博文市長は住民や市議会が反対する中で移転を容認し平成19年1月、国との協定書を交わした。
■米軍再編
この時期、ソ連の崩壊、冷戦の終結を受けてアメリカは、世界への軍隊配置を再編する「米軍再編」を進めた。
在日米軍の再編では沖縄・嘉手納基地のF15戦闘機訓練の一部移転先の候補に千歳基地が挙がり、札幌防衛施設局が苫小牧市や千歳市に「(自衛隊との)共同訓練は年間60日以内、早ければ年度中に実施」と説明したのが平成18(2006)年3月のことだった。
これに対して当時の桜井忠市長は移転反対を表明し、市議会も全会一致で反対を決議した。
しかし5月、閣議で在日米軍再編に関する基本方針を決定し、F15戦闘機訓練千歳基地移転などが決まった。
■移転受け入れ
岩倉博文・新市長は就任の翌月、移転受け入れを表明した。
「訓練移転の受け入れはやむを得ない。住民の気持ちは十分理解しており、悩みに悩んだ上での判断」。選挙戦では「白紙の状態から住民の意見を聞いて判断する」としていたし、地域の懇談会では、実弾誤射への不安や詳しい訓練内容を明らかにしない政府への厳しい批判も噴き出していた。
それに対して、「悩んだ末」というものの、いかにも早すぎる決断だった。
■協定締結
市議会は猛反発。「市議会はやみくもに反対決議をしたわけではない」「論議を経ずに独断する手法には問題がある」。地域住民も「何のために住民の意見を聞いたのか」
岩倉市長は議会対応のまずさなど一定の反省を示しつつ、訓練移転に伴う騒音対策、事故防止、地域振興策等について、札幌防衛施設局との協定の締結(平成19年1月)に向かう。
これらの動きを、市民はどう捉えたのか。
「協定内容は訓練移転の対象となった全国6カ所の協定内容とほぼ横並び。訓練の飛行形態や基地利用に突出した制限を加えるのは難しいが、全国の基地周辺自治体が連携して訓練移転の拡大に箍(たが)をはめることができれば協定の意義はある。岩倉市長は容認した責任を果たすため、この一点は断じて譲らず、どこまでも協定順守を求めなければならない」(2007年1月27日付、苫小牧民報)。
(一耕社・新沼友啓)
《2007年報道ドキュメント》
〈1月9日〉市はインターネットで手続き可能な電子申請システムを運用開始
〈1月17日〉鶴丸百貨店(2002年10月閉店)跡地から温泉が噴出
〈2月21日〉勇払唯一のスーパーマーケット「ユーアイ本店」閉店。ガソリンスタンドとドライブイン「ユーターン」2月末に閉店
〈3月26日〉「053(ゼロごみ)大作戦」の実施本部(本部部長・岩倉博文市長)設立総会開催
〈4月1日〉市のまちづくり憲法「市自治基本条例」施行
〈6月20日〉食肉加工卸会社ミートホープが牛肉コロッケの原料ミンチに豚肉を混ぜ、原料偽装をしていたことが発覚
〈6月24日〉第58回全国植樹祭がつた森山林隣接地で行われる。国内各地から約1万人が参加