子どもの権利条約 子どもであっても、大人と同じように、一人の人間としての権利が保障されているのを知っているだろうか。そのことを定めているのが、1989年に国連総会で採択された「子どもの権利条約」だ。
この条約は、米国を除く196カ国・地域が批准している。特徴は、18歳未満の子どもを単なる保護すべき対象としてではなく、権利の主体者とみなし、発達の段階に応じて対応すべきとしている点。「差別の禁止」「子どもにとって最善の利益」「生命、生存、発達に関する権利」「子どもの意見の尊重」の4原則から成り、日本で2023年に施行された「こども基本法」も、この考えを基本理念としている。
しかし、先頭に立って国や社会を築いている大人の中には、「子どもにまともな意見が言えるのか」と冷ややかな見方をする人もいる。また、「権利を主張する前に義務を果たせ」という声も根強い。
忘れてはならないのは、「どの子も権利の主体者」ということ。例えば、日本の教育制度では小中学校は義務教育だが、子どもに学校へ行く〝義務〟が課せられているのではなく〝学ぶ権利〟があると考えるべきだ。
子どもの権利を保障した社会を実現させるには、政府の役割が重要だが、デジタル技術や気候変動、親の就労環境など、企業と協力しなければ解決できない課題もある。企業は子どもの権利を意識した上で、子どもとの関係を見直し、より良い付き合い方をする努力が必要だ。
(文・日本総合研究所チーフスペシャリスト村上芽、イラスト・冬川智子)
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