―2023年を振り返って。
「新型コロナは5類に移行したが、決してコロナ前に戻ったというわけではない。当社もテークアウトできるファストフードは支持されているが、アルコールを提供する業態は厳しく、勝ち負けがはっきりとしている。ただ、ここ数年推し進めてきた製販一体型事業への構造転換は計画通りに進展している」
―外食業界の現状や課題は。
「抱える課題は多い。少子高齢化による人口減、原材料価格や電気代の高騰、人手不足があり、コロナ前から大きく収益構造も変わった。特に少子高齢化は、人がいることで成り立つ外食産業にとっては厳しい。また、食材一つ仕入れるにしても、世界との調達競争力の低下を感じている。当社は新事業への挑戦などで戦う土俵を広げたり、生産も担うことで原価を下げたりしている。人材不足の対応では離職対策に乗り出し、社員とのコミュニケーション方法を変えた。昨年12月に20代社員の提案で、初めて社内運動会を開いた。社内のコミュニケーションの場を広げ、風通しを良くしようと考えている」
―21年から指定管理する後志管内黒松内町の食品加工センター「トワ・ヴェール」や、22年に取得した同町の牧場など、食品製造事業の現状は。
「まだ投資の段階で、これから回収していく。『トワ・ヴェール』は運営から約2年で黒字に転換。22年末に取得した牧場『TOMONIゆめ牧舎』も赤字だったところで、ある程度の投資をしていく。製造事業は手応えを感じている。
本道ならではの酪農や乳製品は、本州や世界のマーケットで戦える。トワ・ヴェールで製造する『くろまつないのゴーダ(長期熟成)』が昨年、ワールドチーズアワード2023で銀賞を受賞した。海外で商品を売っていくことが、人口減が進む日本を考えると、重要になってくる。
黒松内町と昨年12月に包括連携協定を締結した。当社の牧場や農園などがあり、将来の布石として、関係を深めていく」
―今年の展望は。
「23年の取り組みを継続し、形に仕上げていく年になる。外食事業は利益が出る業態で新規出店しつつ、製造事業にも注力する。かつては外食が売り上げのすべてだったところを、外食と製造を半分ずつにし、かつ売り上げ規模が2倍になる構造にしていきたい。
海外進出に向けても動いている。催事などを通じて現地の法人やバイヤーなどから興味を持たれている。外食事業も国内の新規出店は難しくなっており、東南アジアなどへのフランチャイズ出店を常に検討している。海外でも国内と同じく稼げるようにし、どのような状況でも耐えられる会社を目指す」
(終わり)
1978年創業。苫小牧市に本社を置く上場企業。「モスバーガー」などフランチャイズ加盟店、自社ブランド「かつてん」を展開。2023年3月現在、正社員数は94人。