(8)ラピダスとのつながり模索 IWM生産来年本格化 ダイナックス 伊藤(いとう) 和弘(かずひろ)社長

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  • 2024年1月26日
(8)ラピダスとのつながり模索 IWM生産来年本格化 ダイナックス 伊藤(いとう) 和弘(かずひろ)社長

  ―2023年を振り返って。創業50年の節目だった。

   「激動の1年だった。今も続くロシアのウクライナ侵攻は、大きな影響を及ぼしている。欧州から輸入している摩擦材原材料の合成繊維は、陸上輸送から航空輸送になり費用は大きくかさんだ。インフレにより鋼材価格の高騰もある。価格転嫁しているが、厳しい状況は続いている。

   ただ、悪いことばかりではない。創業半世紀の節目に向けて新事業、製品造りの種まきを数年前からやってきた。これまで培った技術を生かし、電気自動車(EV)用部品への応用や(ドアを開閉する部品)ドアヒンジ、地震などの揺れを緩和するダンパーなど、幅広いジャンルでの活用を模索している」

   ―小型EV向けインホイールモーター(IWM)は。

   「約10年前から研究開発し、昨年10月に苫小牧の第6工場で、約4億円をかけて先行開発ラインを導入した。早ければ3月ごろには契約に至る可能性があり、25年に本格的な立ち上げになると思う。

   主にベンチャー企業から引き合いが多く、建設機械や小型風力発電などへの搭載にも興味を持たれている。少量生産でもコスト面さえ合えば対応し、実績を重ね、将来のEV採用につなげたい」

   ―安平町のワイン事業や厚真町の大沼野営場指定管理について。

   「ワイン事業は24年度にブドウ苗木1万5000本を植えると、予定の計2万9000本に達し、ワイン5万本分のブドウを収穫できる土台が整う。ワイナリーは25年の完成を目指し、酒類製造免許取得や醸造と進む。建設用地は昨年、安平町の道の駅周辺に約1000坪(約3300平方メートル)を取得した。にぎわい創出の相乗効果が期待できる最適な場所だ。

   大沼野営場は、指定管理1年目だった昨年(4月以降)は、あえて現状維持で営業して実態を調べた。来場者の約4割がソロキャンパーで、家族連れの利用も多く、『これだけ自然豊かなキャンプ場はない』と好評だった。来年度は沼沿いの道路整備、トイレ増設、炊事場改築などリニューアルを予定している。厚真町の公共温浴施設こぶしの湯あつまと連携し、来場者に入浴券をプレゼントする取り組みも行い、本来の目的である町おこしを加速させる」

   ―カーボンニュートラル(CN)の取り組みも加速している。

   「苫小牧工場で昨秋、電力を直接供給するオフサイトPPA(電力販売契約)方式の大規模太陽光発電設備、木質バイオマスボイラーがそれぞれ稼働を始めた。苫小牧、千歳両工場の従業員駐車場に設置したソーラーカーポートは今年1月に通電を開始した。二酸化炭素(CO2)削減率は19年度比39%となり、30年までに掲げた同46%達成に大きく近づいた。さらにバイオマス発電や水素の活用なども考えている」

   ―今年に向けて。

   「摩擦技術はまだまだ活用の余地があり、今後もさまざまな分野に取り入れるための種まきをしたい。同じ千歳市に進出したラピダスとのつながりも模索している。一緒にできる事業、半導体製造に生かせる技術はないかと、常にプラスに捉えている」

  メモ

  自動車部品のクラッチ板製造では世界屈指。本社は千歳市で、苫小牧東部産業地域の柏原地区にも製造拠点を構える。

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