(7)地域経済緩やかに回復 脱炭素ビジネスチャンスに 苫小牧信用金庫 小林(こばやし) 一夫(かずお)理事長

  • 企業トップに聞く2024, 特集
  • 2024年1月19日
(7)地域経済緩やかに回復 脱炭素ビジネスチャンスに 苫小牧信用金庫 小林(こばやし) 一夫(かずお)理事長

  ―2023年を振り返って。

   「当行は昨年末現在、預金等残高は5287億円で前年比14億円増、貸出金残高は2607億円で113億円増と悪くない内容だった。預金はコロナ禍対策の各給付金がなくなって伸び率が下がったが、貸出は不動産投資への資金などで好調。個人向けも住宅ローンの新商品提供など、てこ入れが利いて高めの伸び。昨年は『ゼロゼロ融資』の利子ゼロ期間が終了し、元本の返済も本格化したが、資金繰りが厳しい事業者には、借り換えや条件変更など柔軟に対応した」

   ―地域経済の現状と今後の見通し、課題は。

   「昨年は景気が緩やかに回復も、企業や家計は物価高に苦しんだ。苫小牧地域の事業者も売り上げはそこそこ戻ったが、コスト高のため、利益回復は売り上げと比べて小幅だ。

   今年も地域経済は改善傾向をたどるとみる。ただ、もともと経営状態が厳しかった事業者は、コロナに加えてコスト高の追い打ちで業況が悪化しており、『二極化』を懸念している」

   「苫小牧は道内有数の工業・港湾都市で、製造・運輸業は二酸化炭素の排出量が多い課題を抱えているが、見方を変えれば脱炭素をビジネスチャンスにする余地が大きいといえる。

   既に大手企業はさまざまな取り組みを実施し、昨年11月に苫小牧市も『脱炭素先行地域』に選定された。当行も共同提案者に名を連ねている。脱炭素に関する融資案件が出てくれば喜んで相談に応じたい」

   ―次世代半導体製造ラピダス(千歳市)進出の影響をどうみるか。

   「苫小牧は(道央圏で関連産業集積を図る)『北海道バレー構想』の対象地域で、DX(デジタルトランスフォーメーション)で前向きな話題も多いが、脱炭素化も含めいずれも大企業主導のプロジェクト。地域の中小企業も巻き込んで地場産業化し、根付かせられるかが課題だ。

   ラピダスについては今後の見通しや地域への波及はまだ分からない。中長期的には関連企業の進出や地元企業のビジネスチャンス増加、自治体の税収増も期待できるのではないか。人材の流失を恐れる声もあるが、技術者の転入による人口増や理系学生の地域へのつなぎ止めも期待できる」

   ―新年の展望は。

   「24年度も中期経営計画に掲げた項目を継続し、重点施策は『取引先支援の強化』。経営改善や事業再生支援などを続ける。副業人材の紹介も24年度、人材派遣会社とともに始めたい。

   マイナス金利政策が解除されれば、有価証券などの運用利回りが向上し、収益増が期待できる。保有する有価証券は昨年11月末現在、約1660億円で貸出に次ぐ収益源。金利リスク管理に注意し、運用能力も強化したい。

   一方、当行も人手不足が深刻化している。昨年は一部店舗の法人向け貸し出し業務を母店に集約するなど業務を見直した。アンケートなどで職員の要望を調べ、人材の確保や育成の取り組みを強化したい」

  メモ

  東胆振を中心に、29の本支店と出張所を構える。近年は札幌圏で貸し出しを強化。従業員数は昨年3月現在225人。

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