―2023年を振り返って。操業開始から半世紀の記念すべき年だった。
「一つの大きな出来事。私自身、1999年に現場職員として着任してから計4回、約12年間にわたって勤めてきた縁深い製油所。所長として節目を迎えることができたのは、うれしいタイミングだった。
新型コロナウイルス情勢の変化もあって、鈴木直道知事にも参加いただいた記念式典や、各イベントを予定通り実施できた。特に出光美術館(東京)の全面協力で実現した苫小牧市美術博物館の特別展は前期、後期の2部制で展開し、計1万2000人以上が来場してくださった。イベントを通じて地域の皆さまに感謝の気持ちを伝えることができた」
―二酸化炭素(CO2)を分離、回収、貯留するCCSの取り組みも大きく動いた。
「石油資源開発(東京)、北海道電力(札幌市)と共同で検討してきた苫小牧地域のCCS事業が昨年7月、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から業務委託を受けた。2030年までにCO2貯留量年間150万トンが目標。設備など基礎検討の最中で、3社間で定期的に会合を開きながら、4月以降の具体化に向けていいスタートが切れるよう、図面を描いているところ」
―出光興産の中期経営計画(23~25年度)に明記された合成燃料の製造について。
「CO2と水素による合成燃料は、生成過程でCO2を排出しないグリーン水素製造など、さまざまなことに挑戦していかなければならない。まだ準備段階といったところだが、関係機関との議論はかなり加速している。
出光興産は次世代エネルギーの社会実装に向けて、昨年12月にCNX(カーボンニュートラルトランスフォーメーション)戦略本部を設置した。道製油所からは鳳城延佳副所長ら2人がメンバーに名を連ねている。方向性が明らかになれば、しっかり地域の皆さまにお伝えしたい」
―今年の展望は。
「現状の石油精製をより安全、安心に、そして生産性を高めていきたい。その中心的な役割を担うのがDX(デジタルトランスフォーメーション)。設備の自動運転化や異常の早期発見などで現場に適用していき、石油精製の働き方改革を前進させる。すでにスマートフォンのアプリケーションを駆使した設備の外面腐食管理などで一定の成果が出ている」
―今年は4年に1度の大規模定期補修工事、シャットダウンメンテナンス(SDM)も控える。
「長時間労働の抑制など建設業の働き方改革によって、大幅な変革が求められている。協力会社と議論を進めており、従来とは大きく異なる環境下になるが、経済的なロスや必要な工事を見送ることなく点検を完遂したい」
メモ
北海道や東北、北陸地方まで石油製品を供給する道内唯一の製油所。原油精製能力は1日15万バレル。