―2023年を振り返って。
「紙の生産は新聞用紙も印刷用紙も右肩下がりが続いている。日本製紙連合会の統計でも23年10月時点で、全国の新聞用紙は前年比9%減。苫小牧工場も同様に1割ほど減っている。21年に生産を始めた段ボール原紙も、中国などアジア圏の景気減速の影響を受けて、振るわなかった。
輸出品は5月ごろまでは良かったが、需要のある中国がゼロコロナ明けの混乱から低迷し、出荷量が激減した。
一方、国内向けは販路拡大の成果が出始め、増加した。国内向けが海外向けをカバーする形で、全体としては少しの減少でとどめられている」
―昨年10月の火災の原因究明や今後の対策は。
「苫小牧工場で火災事故を発生させてしまい、近隣の住民の皆さまや取引先の方々、行政機関にも多大なるご迷惑をおかけした。本当に申し訳ないの一言でおわびしたい。
原因は消防によると、紙をすく機械の抄紙機のドライヤー部分に堆積していた紙粉が自然発火したとみられている。調査は続いているが、類似した紙粉がたまる箇所は清掃した。再発防止策については今後、消防と協議の上でまとめ、社内で水平展開を図っていく」
―中長期的な課題は。
「新聞用紙の出荷量減少への対応と、工場運営のための人材確保、カーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)の三つが課題。紙の出荷量減は工場として打てる手はあまりなく、少しでもコストが低く品質が安定したものを出荷することに限る。いずれバイオマスを生かした付加価値商品への切り替えを考えざるを得ないだろう。
CNは王子ホールディングス全体として、二酸化炭素の排出量を30年までに18年度比70%減が目標。工場単体の排出量などは非公表だが、照明の発光ダイオード(LED)化などの地道な省エネや生産効率の向上、化石燃料からの転換で排出量を削減していく」
―人材確保は。
「これから退職者が増えることもあり、採用を強化している。高校1、2年生の工場見学の受け入れやインターンシップの対象拡大など、地道な努力を続けている。
工場見学は昨年、道内10校を受け入れた。通常の紙ができる工程を中心としたものではなく、工員の仕事ぶりを見てもらい、職場環境がイメージしやすい内容にしている。次の成長のステップに向けて人員の確保を進め、ノウハウや技術も継承していきたい」
―今後の展望は。
「紙の需要が減少していくトレンドは今後も変わらない。段ボール原紙の生産量に関わる中国経済の動向や、道内の農作物の生産状況など、まだ読めないところが多い。今年は次の投資に向けたはざまの年になる。25、26年ごろに始まるCNに向けた新たな投資に向けて、今ある製品の安定生産を継続していきたい」
メモ
苫小牧工場は1910年に創業。新聞用紙や段ボール原紙のほか、有名漫画のコミック用紙も生産。従業員数は昨年12月時点で約600人。