―昨年を振り返って。
「屋台骨を支えてきた自動変速機(AT)の生産が限りなくゼロに近づく一方、ハイブリッド系の電動ユニットは徐々に増えた。2022年度は売上高1929億円で2年ぶりに増収に転じたが、23年度は当初の見立てよりも少し下がり気味に経過している。
新型コロナウイルスの5類移行に伴い、昨年7月から社会貢献活動を解禁した。とまこまい港まつりの市民おどり参加や工場見学の再開は本当にうれしい。今後も地域のため積極的に行動したい」
―今年の見通しは。
「春に新たな電動車向けハイブリッドユニットのラインオフを予定している。確実に立ち上げていくことが大きなポイントになる。生産部品の主力はCVT(無段変速機)で、電動化率はまだ20%未満と少ない。磨いてきた技術をさらに高め、地道なTPS(トヨタ生産方式)で改善しながら競争力を付け、電動化部品の量産拠点を目指したい」
―昨年1月に新編したDX(デジタルトランスフォーメーション)、BC両企画推進室の現況は。
「DX企画推進室は情報システム、セキュリティー分野と合体する形で新設した。各部署から2~3カ月スパンで職員を出向させ、人材を育成するなどDX化にスピード感が出た。セキュリティー面はサイバー攻撃対策、BCP(事業継続計画)が具体化してきた」
「ビジネスクリエーションのB、カーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)のCを取ったBC企画推進室は昨年から、法人向けものづくりサポート事業を始めた。十数社と契約し、新入社員向けの安全教育など、すでに一定の評価を頂いている。食品加工や一次産業など関係構築の裾野を、苫小牧近郊から全道各地にも広げた。トヨタ自動車が掲げる35年の全工場CO2(二酸化炭素)排出量の実質ゼロ化は自社だけではできない。地域と一緒に発展しながらCNに進むことが理想の形」
―スパークス・グループ(東京)の水素サプライチェーン(供給網)実証事業に参画し、脱炭素先行地域の共同提案者にも名を連ねる。
「北海道は暖房設備でCO2が多く発生する。水素の実証事業では(同社の)はすかっぷホールに水素ボイラーを設置する予定。工場見学者が足を運ぶ場所でもあるので、水素活用に理解を深める機会になればうれしい。脱炭素先行地域への協力は、構内の太陽光発電設備で得た電力を不使用時にうまく活用してもらう」
―少子高齢化と相次ぐ企業進出で人材確保がより厳しさを増している。
「市外での知名度はまだ低い。6年連続で健康経営優良法人(経済産業省)大規模法人部門の上位認定ホワイト500に選出されていることなど、魅力をより対外的にアピールしていかなければならない。加えて地域の皆さまに信頼される会社を目指すことで、トヨタ北で働きたいと思ってくれる人を増やしたい」
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2024年がスタートした。昨年は千歳市で半導体製造ラピダス(東京)の工場建設が始まり、ソフトバンク(同)が苫東地域に大型データセンター進出を表明するなど、地域経済のかつてない発展が期待できる話題が相次いだ。新型コロナウイルスが5類に移行し、脱炭素社会実現を目指す動きも加速する中、苫小牧市内の各企業トップは現状をどう捉え、今年をどう展望しているのか。インタビューした。
メモ
苫小牧市勇払に立地する自動車部品製造業で、道内ものづくり企業では最大手。従業員数は市内企業で最多の3400人規模。