次世代半導体の国産化を目指すラピダス(東京)の千歳市進出に、隣町・苫小牧市の苫小牧工業高等専門学校も有望な就職先として期待を寄せている。小林幸徳校長(66)に人材育成の展望を聞いた。
(聞き手・樋口葵、撮影・髙橋真希)
―今月12日、1年生を対象に初めて半導体の知識を学ぶ授業を行った。
「学生たちにとっては将来の就職の機会が増える。高専は5年間なので、少しずつ半導体や関連産業を理解してもらって、各自のキャリアにつなげてほしい」
―今後の苫小牧高専での半導体教育は。
「1年生で基礎的な概論を学び、2~3年生はもう少し深く半導体を知ってもらう。進路を考える4、5年生ではより専門性を身に付けるといったふうに少しずつ積み上げていく。今後は半導体関連企業の専門家を招いて講演会を開いたり、企業見学も行ったりしていく」
―これまでも4、5年生のカリキュラムには半導体を学べる内容もあったが、1~3年生ではなかった。各学年で半導体教育を始める狙いは。
「深く一つの分野を勉強することも重要だが、他の分野について知識を持つ中で自分の専門分野がどんな意味を持っているのか理解する必要がある。どんな研究にもデータ分析が不可欠なようにラピダスやその周辺企業では、専門人材だけでなく量産工場をしっかり回していく技術者が必要。そのためには、特定の分野に限らず、広くさまざまな分野を学ぶ学生たちが半導体産業を理解し、そこに各自の専門性をつなげていくことが大事」
―ラピダスは学生の新たな雇用の受け皿となりそうだ。
「半導体関連企業に就職するのは数年に1、2人程度だったが、今後は毎年数名希望者が出て就職につながればいい。これまで(卒業生)全体の6割が道外へ出て行っていたが、道内に産業基盤ができてその関連企業を含め、相当な求人数になれば道内の産業界全体が盛り上がるはず」
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■次世代半導体
電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ半導体は、スマートフォンから自動車まで幅広い製品に使われるデジタル機器の中心部材。時代とともに微細化、集積化が進み、ウイルスよりも小さな「2ナノプロセス」を製品化する動きも加速する中、最先端のものを次世代半導体と呼ぶ。