来場者数100万人を年間目標に掲げる白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)。実績は3年間で87万人余と遠く及ばないが、新型コロナウイルスの5類移行で同施設や国は巻き返しを狙う。期待される来場者増をまちなかの観光や経済活性化にどう結び付けるか、町や町民も模索を続けている。
ウポポイ開業を契機に、町内ではJR白老駅前広場や自由通路が整備された。飲食店のメニュー表の多言語化やガイド人材の育成、交流促進バスの運行など国内外からの観光客を受け入れる環境づくりは進んだ。
開業した2020年度、白老町の観光客入り込み客数は道内5位の177万人。21年度はコロナ禍で大きく落ち込んだものの、22年度は220万人に上り、ウポポイ効果が数字に表れた。さらに中国本土から新千歳空港への直行便が今月、3年4カ月ぶりに運航を再開し、期待が一層膨らむ。
白老観光協会(福田茂穂会長)は22年度、市町村単独の観光地域づくり法人(DMO)として観光庁に登録した。胆振日高地域では初の取り組みだ。
ウポポイと周辺地域で相乗効果を生み出すため、今年度は旅行業登録申請に着手する。現地の駅や空港に集合し、そこから旅が始まる「着地型ツアー」の企画、販売も手掛けていく。福田会長は「地元の商店街としっかり連携、協力、情報共有し、合意形成を図りながら着実に進めたい」と意欲を見せる。
地元商店街も取り組みを模索中だ。JR白老駅北の商店街店主らでつくる白老商業振興会の村上英明理事長は「ウポポイ、町、町民の3者で話し合える場を持てないか」と提案し、来場者がまちなかを回遊する方策を検討したい考えだ。
観光情報発信と町民交流拠点の性格を持つ白老駅北観光インフォメーションセンター(ポロトミンタラ)は、ウポポイに近接する好条件を生かし、観光客が求める食事、宿泊、レジャー、土産の情報を提供している。
住民レベルの動きも始まった。町の観光ガイド養成講座を受講した町民たちが21年4月、白老おもてなしガイドセンター(岩城達己代表)を旗揚げした。ポロトの森散策やサケの遡上(そじょう)見学、海産物の買い物などウポポイを起点にした町内周遊の観光ガイドを有償で引き受け、旅行客にまちの魅力を伝えている。
岩城代表は「ウポポイとの合意形成を前提として、いずれ施設の内外でガイドを担当したい」と前向きだ。今年9月には世界60カ国の旅行会社などが集まるATWS(アドベンチャートラベル・ワールドサミット)が道内で開かれる。「訪日客対応が必要な時に協力できたら」と話している。
(この企画は白老支局・半澤孝平が担当しました)