北海道の中でも比較的「若いまち」の苫小牧だが、高齢化は確実に進展している。人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は1月末時点で29・83%で、30%台到達も目前だ。これまで地域活動を中心的に担ってきた人たちも高齢となり、支えを必要とする側になりつつある。市は新年度、市民がつながり、支え合いながら地域をつくる共生社会の推進に取り組む。
その一つとして設置するのが、成年後見制度の利用を促進するための中核機関。認知症などで判断力が低下した人の自己決定を手助けする同制度は、裁判所や医療機関、金融機関、地域包括支援センターといった権利擁護機関の連携が欠かせず、核となる機関が必要。市社会福祉協議会が市の委託を受けて運営する市成年後見支援センターと協働で設置する。
特に制度の担い手となる市民を増やすため、市民後見人の養成に力を入れる考え。市民後見人は2018年1月に3人同時に誕生してから現在までの約4年間で34人に増えた。しかし、増え続ける認知症高齢者を支えるには今以上の担い手確保が必要なことから、養成講座の積極的な実施を計画している。
また、成年後見支援センターの広域化にも着手。市内で行ってきた市民後見人の養成や制度の周知、相談対応などのセンター業務を安平、むかわ、厚真の3町でも展開する考えだ。
一連の事業予算に21年度当初比約900万円増の3060万円を計上。総合福祉課の細野森課長は「19年度調査で制度の内容を知らない市民が6割に上った。中核機関を置くことで制度の周知と積極的な利用促進につなげたい」と話す。
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地域福祉の拠点整備も進める。年齢や障害の有無を問わず、多様な市民の交流と地域活動を促進する東開文化交流サロンを12月、東開町に開設する。備品購入など整備費用5億2620万円を新年度予算案に計上した。2万冊超の蔵書を置く図書室や絵本ホールのほか、多目的ホール、カフェ、パブリックスペースなどを設置する。
従来と同様に市民が自由に集い、交流できる場づくりに加え、地域の課題解決のため多機関との連携を図るコーディネーターや、社会で孤立している人に寄り添い、適切な支援につなげる見守り支援員も配置する。経済的困窮や病気、介護、育児疲れ、引きこもりなど、さまざまな困りごとを抱える人に丁寧に目を向け、地域ぐるみで助け合う仕組みを探る役割も担う。
市内でも初の施設形態で、福祉部の大橋透次長は「一つの制度や分野では解決できない複雑な問題が増えており、人と人、地域資源同士の結び付きが不可欠となっている」と、交流サロンの意義を語った。(姉歯百合子)