苫小牧市は、市内小中学校の校舎の耐震化対策を精力的に推し進めてきた。今年3月までに完成する光洋中学校の屋内運動場の改築で、耐震化率は100%となる。今後は、老朽化した建物の改築や長寿命化に向けた大規模改修を本格化させていく。
市内の小中学校は、2021年時点で築30年以上が29校、築40年以上が26校となっている。同時期に工事が集中しないよう考慮し、22年度は樽前小学校、大成小学校など9校での校舎や体育館、外壁、駐車場の実施設計や老朽度合いの調査、工事を行う。
宅地開発が進んでいる東部地区は未利用地も残っており、今後も分譲によるさらなる人口増が見込まれる。市内最多の児童数871人が在籍する苫小牧ウトナイ小学校では、駐車場を活用し、最大9教室分の校舎増築をする。22年度は実施設計と駐車場整備工事を行う予定で、4212万6000円を見込む。同校の丹野靖彦校長は「外国語や算数の少人数指導専門に使える部屋を取れず、他の利用者がいないときに図工室などを利用しているのが実態だ」と説明する。
同じく生徒増が想定される苫小牧青翔中学校は21年度、普通教室6教室や音楽室、美術室を増やす改築をしている。22年度は、この工事のため敷地内に仮移動させたテニスコートを元の場所に戻す作業がある。
一方、市内全体では児童数や学級数の減少が予想される。市教育委員会は学校規模適正化の現状と課題を示す資料の中で、21年に1万3132人いる児童生徒数が、27年には1460人ほど減少すると見込んでいる。
西部地区では小規模校の解消が見込めないことから、19年度末に旧明徳小学校が閉校し、錦岡小に統廃合された。東西で人口のアンバランスが続く苫小牧市の実情に対し、市教委の担当者は「人口推計に急激な落ち込みはなく、直ちに統廃合に絡むところはない」と前置きした上で、「学校規模適正化と学校の改修や改築を両にらみで考えていかなければならない。子どもたちにとって良い教育環境を提供していきたい」と話している。
市教委は、市内全域から障害児を受け入れている啓北中山なみ分校についても、旧明徳小校舎を使った特別支援学校「苫小牧支援学校」が21年に開校したことで「役割を終えた」と判断。23年3月末の閉校を決め、閉校式典や記念誌の作製といった事業のための補助金70万円を計上している。跡地について市教委は「有効活用したい」と話し、教育の施設として利用できるか検討を進めていく。
(高野玲央奈)