(1) 成長戦略 都市再生具現化に意欲 駅前活性化へ 整備手法を検討

  • 新時代への扉 苫小牧市2022年度予算, 特集
  • 2022年2月19日
都市再生コンセプトプランに基づきキラキラ公園で行われたキッチンカーの実証事業=2021年7月
都市再生コンセプトプランに基づきキラキラ公園で行われたキッチンカーの実証事業=2021年7月

  「一つ一つしっかり取り組んでいかなけばらならない」―。新年度予算案を発表した9日の記者会見で岩倉博文市長はそう語り、苫小牧市の成長戦略を描いた都市再生コンセプトプランの具現化に意欲を見せた。ただ、4期目の任期が7月に終わる岩倉市長は自らの去就を明らかにしておらず、真意に不透明さが残る。

   改選期の予算編成は継続事業中心の骨格予算が基本とされるが、2022年度当初予算案は21年度当初比9億5900万円増の798億3400万円。市長の政策実現への意気込みをうかがわせる。新型コロナウイルス禍など社会状況の変化に加え、新年度開始から3カ月後の市長選で市政が停滞するのを避けるため、当初から本格予算に近い規模で編成しなければならない事情もあるが、5期目に向けた足場固めを急ぐ思惑ものぞく。

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   注目されるのは、昨年3月に公表された同プランに伴う動きだ。同プランでは、▽ものづくり産業▽臨海ゾーンのロジスティクス(物流全体の最適化)▽臨空ゾーンの国際リゾート―を軸にまちづくりの将来像を描いた。

   市長公約の中心市街地活性化も同プラン推進事業に位置付けられ、22年度は1400万円を投じ、苫小牧駅周辺ビジョンの策定に乗り出す。地元関係者や民間事業者に聞き取りをし、具体的な整備手法まで検討する。駅前再生の障害となっている旧商業施設「苫小牧駅前プラザエガオ」をめぐる市と地権者との交渉への影響は未知数ながら、岩倉市長は「任期の中で、山を動かすような努力をしていかなければならない」と力を込める。

   同プランの関連事業として、最新のデジタル技術を都市運営に生かすスマートシティ構想、MICE(ビジネスイベントの総称)誘致推進方針も策定。関連エリアのにぎわいを生むコンテンツ創出事業には、企業版ふるさと納税を財源に2億円余りを投じる。

   この他、市の最上位計画の総合計画第7次基本計画も同年度中に策定を予定している。2050年までに二酸化炭素の実質排出量ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」宣言(昨年8月)を踏まえ、環境基本計画の大幅改訂にも着手する。

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   コロナ禍の影響は、税収上にはまだ表れていない。20億円維持が目標の財政調整基金も21年度末時点で約39億円の残高があり、想定外のコロナ対策などで取り崩したとしても20億円以上は保てる計算だ。しかし市長は、老朽化した大型公共施設の更新を挙げた他、ワーケーション拠点構築事業など新時代に向けた投資の必要性も念頭に「税収が落ち込んでいないと言われても意味がない」と険しい表情を浮かべた。

  (河村俊之)

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   転換期に立つ苫小牧市が目指す新しい姿とは―。2022年度予算案から検証する。全4回。

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