道立の特別支援学校「苫小牧支援学校」(小笠原正樹校長)が、今年4月に明徳町で開校した。2020年3月に閉校した旧苫小牧明徳小学校の校舎を活用し、苫小牧市、白老町、安平町の知的障害を持つ小学生と中学生が通う。義務教育段階にある児童生徒がより身近な場所で、専門性の高い教育を受けられる機会につながっている。
特別支援学校は、障害の程度が比較的重い子どもに対し、特別支援学校教諭免許状を持つ教員らが指導を行う。これまで苫小牧市内にはなく、同市や近郊に暮らす知的障害のある児童生徒は、約60キロ離れた平取養護学校(平取町)が「就学すべき学校」に位置付けられ、市内から通う子どもたちは寄宿舎生活を送りながら教育を受けてきた。通学の負担や親元から通わせたいと、地元の小中学校の特別支援学級を選択する家庭もあった。
市は03年から道に特別支援学校設置の要望活動を進め、16年には閉校になる明徳小を新設校の校舎として使用することを提案してきた。小学1年の中佐優李君(7)の母の早苗さん(41)は「開校していなければ、市内にある別の遠い学校を選択しなければならなかった」と話し、「一人一人に合わせて教育をしてくれ、子どもが成長できている」と開校を歓迎する。
開校当初の児童生徒数は35人だったが、保護者の転居などで今月18日時点で40人が在籍。そのうち37人が苫小牧市内、3人が白老町から通っている。安平町からの入学はなかった。寄宿舎は設けておらず、スクールバスや保護者の送迎で通学している。
卒業後の進路は、高等部のある支援学校への進学や、福祉事業所などへの就職で地域で働き、暮らすことになる。社会と連携した教育の推進が不可欠で、市内全体を教場と捉え、さまざまな教育資源を活用しながら必要な力を身に付けさせたい考えだ。
体験学習では、小学生が学校近くにある商業施設のバックヤードを見学したり、中学生も企業や福祉事業所から資材提供を受け、ペットが座る紙づくりなどを手伝う職場体験を行ったりしている。
小笠原校長は「明徳小から地域の学校をバトンタッチされた。本校の教育活動を充実させていくことで、地域も一緒に元気にしていく役割も担っている」と強調。「地域と共に育つ特別支援学校を目指して取り組みを続けたい」と話している。(高野玲央奈)