新型コロナウイルス流行2年目を迎えた小中学校は昨年のように長期の一斉臨時休校こそなかったものの、国の緊急事態宣言などが発令されると、宿泊行事の延期、部活動の制限など苦境を強いられた。「このまま修学旅行を行えないと、卒業アルバムに載せる写真確保も危うい」。学校現場からそんな焦りの声も聞いた。
今やどこの学校にも来校者出入り口に消毒液が備え付けられており、手指洗浄はもちろん学校職員による検温や自動検温器で測定を行ってから、入校を求められることが多い。そんな状況下で各校は感染症に最大限の注意を払い、子どもたちへの教育活動を完全には止めない―と授業を続けてきた。
宣言発令中は感染リスクが高いため、行えなかった活動の一つに近距離での室内合唱がある。苫小牧東中学校は「歌には生徒たちを一つにする力がある」と9月の学校祭に向けて中庭に芝生を敷き詰め合唱を行える環境を準備してきたが、宣言期間と重なり、実現することはなかった。
道内での感染状況が落ち着いてきた11月、ウトナイ中では唯一、校歌斉唱の経験を持つ在校生である3年生が1、2年生に3年間の思いを込め、力強い歌声を披露した。マスクを着用した上での数分間の歌唱だったが、たくさんの声が体育館の壁に反響し、実際の人数より多くいるようにさえ思えた。気付けば自然と涙が出ていた。
コロナ前は頻繁に耳にした校歌なのに、今となっては平穏の象徴のよう。新たな変異株「オミクロン株」の感染が国内外で拡大の動きを見せており、来年の教育活動はどうなるか。見通しが付きにくい状況は続くが今度の卒業式や入学式は子どもたちが、誇りを胸に校歌を歌える環境になっていることを願っている。 (高野玲央奈)