今回の特別展では、アイヌ女性が盛装のときに身に着けたタマサイ(首飾り)が十数点展示されている。その中で筆者が一番印象的な資料は、長万部アイヌである故・司馬ハル氏が実際に身に着けていたタマサイである。
北海道立北方民族博物館(網走市)の所蔵資料で、先々代の館長が渡島管内長万部町へ調査に行った際、司馬ハル氏から受け取ったそうだ。このタマサイは、黒色や透明色のガラス玉が多く、中央に巴紋の入ったシトキ(円盤状の金属板)がある。この資料は、司馬ハル氏が着用している写真パネルと共に特別展会場に展示されている。
写真は1955(昭和30)年ごろ、澤博(さわひろし)氏が撮影したものである。この写真を展示する前に筆者は長万部町へ赴き、関係各位からタマサイやハル氏についてお話を伺った。
お孫さんの哲也氏から、所蔵している写真を見せてもらいながら、ハル氏の普段の暮らしやお人柄など、さまざまなことを教えていただいた。ハル氏が笑顔で写っている写真は珍しいそうだ。モノには歴史が込められていることをこのタマサイから改めて教えていただいた。この機会にこのタマサイをぜひ、ご覧いただきたい。
(国立アイヌ民族博物館学芸員・八幡巴絵)
民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館(白老町)の特別展「ビーズ アイヌモシリから世界へ」は12月5日まで開催。観覧料(ウポポイ入場料は別途必要)は大人300円、高校生200円、中学生以下は無料。休館は毎週月曜日。