5 デジタル化 活用始まる教育現場 オンライン学習の環境整備進む

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  • 2021年10月16日
苫小牧東中学校のタブレットを使った授業

  苫小牧東中学校2年生の理科の授業。タブレット端末のAI(人工知能)型ドリル教材で、生徒は基礎から応用まで三つのレベルをそれぞれ選択し、習熟度に合った問題を解いたり、単元で学んだことを入力したりしている。櫻井秀さん(14)は「タイピングは早い方だと思う。文字をすぐに消せるし、操作していて楽しい」と笑顔を見せ、橋本杏里さん(14)も「調べながら操作できるのが魅力」と話す。

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   国のGIGA(ギガ)スクール構想の一環で2020年度、市内の全小中学校に児童生徒が1人1台使えるタブレット端末が整備された。今年度は本格的に活用を始めるタブレット元年だ。

   同中学校で理科を教える北田伸也主幹教諭(47)は、タブレット使用で「子どもたちがより意欲的になった雰囲気だ」と説明する。積極的な利用へ現場の機運も高まりつつあるが、「先生たちは授業に加え部活指導もあり、一斉に研修する時間はなかなか持ちにくい」と明かす。

   苫小牧美園小学校、教務主任の佐藤修平教諭(39)は「タブレットありきの授業ではなく、タブレットを理解促進の手段の一つと捉えれば、やり方は無限に広がる」と前向きに受け止め、市教委による研修を受けたり、先進事例をインターネットで学んだりと積極的に活用方法を探る。

   しかし、活用技術の習得は教員自身の努力による部分が大きく、教職員間で習熟度に差が出る懸念もある。市教育委員会は専門的な知識・技術を持つ人を各校に派遣する「ヘルプデスク」を運用しているが、さらにきめ細かな支援体制は不可欠だ。佐藤教諭は「支援職員などが各校にいれば、その先生を中心にスキルが広がっていくと思う」と提案する。

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   新型コロナウイルス感染拡大により、さまざまな分野で進むデジタル化。昨春、全校が臨時休校となった経験も踏まえ、市教委は10月上旬から来年3月中旬まで、家庭への端末持ち帰りやオンライン上での学習を試行する予定だ。

   全国的には、希望する児童生徒が自宅でオンライン授業を受けられる「選択登校制」を取り入れる自治体や、オンライン授業に支障が出ない通信環境の整備が進み、苫小牧市も1クラスの人数が同時にネットワークに接続できる機器を設けた。

   一方で、端末を持ち帰った場合、家庭によって通信環境には差があり、市教委は環境が十分でない家庭に対し、臨時にネット接続装置を貸し出す考えだ。家庭の通信環境による教育格差の拡大を懸念する北海道教職員組合胆振支部(伊藤智支部長)は「保護者負担ではない方法で対応策を」と訴えている。

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