「市と医師会の連携でスピード感を持った対応ができた」―。岩倉博文苫小牧市長は9月22日の記者会見で、新型コロナウイルスワクチン接種の11月末完了に向け、順調に進む要因を強調した。市内の2回目接種終了は9月30日現在、推計9万7956人、接種率63・4%に達した。同月以降は感染状況も小康状態だ。ただ、今後も「第6波」到来の懸念、国が検討中のワクチン3回目接種など課題は山積で、「今はまだ備える時期」と気を引き締めた。
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コロナ対策の要でもある検査体制の拡充、ワクチンの接種、病床の確保に、市内関係機関は連携しながら対応してきた。昨年5月には苫小牧市医師会(沖一郎会長)が道内で比較的早く、PCR検査センターを開設。医療機関の独自判断で検査できるようにし、感染者のいち早い発見や治療に役立ててきた。
一般市民向けワクチン接種も今年4月以降、個別、集団、巡回と体制を構築し、7~9月はハスカッププラザで独自の職域接種を展開。職域接種は1000人集めることが条件だが、市内中小企業の希望者を取りまとめ、1万8000人弱が接種を完了した。特色ある取り組みで若い世代の接種率向上に貢献した。
沖会長は「皆さまに安心してもらいたい」と力を込め、「これからはPCR検査センターでインフルエンザも検査できるようにしたい」と同時流行に備える考えを示し、コロナワクチンの3回目の接種は「個別と集団で対応できれば」と展望を語る。ワクチン接種の打ち手確保では、同医師会で潜在看護師を活用した例を挙げ「国が積極的に取り組んでくれれば地域でも体制を整えやすい」と話す。
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感染症指定医療機関の苫小牧市立病院も、感染症病床を4床から始めたが、さみだれ式に24床まで拡充。「マンパワー」を確保するため、通常診療の受け入れ制限が続く。2020年度は最大2病棟を閉じ、入院・外来収益は約10億5000万円も減少した。佐々木薫事務部長は「地域に必要とされるコロナ対策を最優先した結果」と振り返る。国の休業補償など約19億9000万円の収入があり、単年度資金収支は約10億6000万円の黒字となったが、思いは複雑だ。
24時間体制の2次救急も王子総合病院と輪番制を敷き、市立の20年度の救急患者受け入れ数は前年度比約3割減の3648人。今年6月には苫小牧日翔病院(矢代町)も、道の要請に基づき感染症病床10床(疑似症患者用含む)を開設したが、国の支援なくしてコロナ対策は成り立たず、地域医療や住民にも大きな負担を強いている。
一方、昨秋以降は感染拡大の波が押し寄せるたび、自宅療養を余儀なくされる患者も増えた。道が患者の重症化リスクを見極め、道内全体で受け入れ先を振り分けているが、自宅療養の経験者からは「容体がいつ急変するか不安だった」などの声も聞かれる。患者の急増に耐え得る医療体制の維持と構築は、今後も求められる。
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19日公示、31日投開票予定の衆院選。コロナ対策や経済施策など主要政党が掲げる政策は、有権者の願いにどこまで応えられるのか。地域の課題を探った。