「せきが止まらなくて苦しく、死を意識する瞬間もあった」
今夏、新型コロナウイルス感染が判明した、苫小牧市内の飲食店に勤務する30代男性は外出、出勤時のマスク着用を徹底し、毎朝の検温も欠かさなかった。陽性が判明した当初、症状は発熱だけだったが急激に悪化し、肺炎の診断も受けた。
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その日の朝も、いつものように体温計で熱をチェック。夕方に寒気を感じる場面もあったが出勤前の体温に異常はなく、通常通り仕事をこなした。閉店後、別の飲食店で食事し、翌日午前3時ごろに自家用車で帰宅。少し熱があるように感じたので改めて体温を測ると37・5度。風邪だと思い、栄養ドリンクを飲んですぐに就寝した。起床後、再び検温すると熱は38・5度まで上昇していた。関節の痛みや高熱がつらく、店主に連絡して仕事を休ませてもらった。
翌日、体温は39度を超え、コロナ感染が頭をよぎった。「感染症専用ダイヤル」で電話相談すると、市内の病院で検査を受けるよう指示された。
市販の解熱剤を飲んで熱が37度後半まで下がったところで、自ら車を運転して病院へ向かった。検査はドライブスルー方式で、PCR検査と抗原検査を受けた。1時間ほど待機し、まずは抗原検査の結果を待った。判定は陽性。医療スタッフが「真っすぐ帰宅するように」と言って、薬を処方してくれたので連絡先を伝えて自宅へ戻った。その後、出たPCR検査の結果も陽性だった。
同じ日の夕方、保健所から連絡があり、発熱2日前からの行動履歴と直近2週間で市外へ出掛けたか、マスクは着用していたかなどを聞かれた。
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陽性判明から2日目、札幌市のホテルへバスで向かった。道内は蒸し暑い日が続いており、車内でエアコンが利いていたためか、高熱のせいかとても寒かった。「熱が下がれば大丈夫だろう」と思っていたが3日目の夜、せきが止まらなくなり、目が覚めた。
たんには血が混じり、胸も苦しく「やばいかも」と危機感を覚え始めた。4日目には医療スタッフからせき止めの薬をもらったが、異常なせきの出方から肺炎では―と心配になり、入院できないかを相談。次の日、苫小牧市立病院の感染症病床に入院できることになった。
院内では車いすに乗せられ、全体をビニールシートのようなものに覆われながら病室まで移動。検査の結果、肺炎の診断を受けたが、検査中は息を止めるのも苦しかった。
病室のベッドは四つで、別の患者1人と同部屋。点滴などの治療を続けるも味覚などに異常はなく、食欲もあった。入院から2日目ぐらいで体温は平熱まで下がった。4日目にはせき止めの薬を飲まなくてよくなった。体調は徐々に回復し、10日ほど後に退院できた。保健所からは「再陽性にならないよう、引き続き感染には気を付けて」と連絡を受けた。
現在は目立った後遺症もなく、従来通り働いているが、少し動いただけで息切れするなど、極端な体力低下を感じる場面もある。闘病生活を振り返り、「感染が分かった時には孤独感もあったが、入院してからは看護師さんをはじめとする医療スタッフの皆さんがとてもよく気に掛けてくれ、精神的にも支えられた」と心から感謝する。「SNS(インターネット交流サイト)などを通した友人からのメッセージにも励まされた」と強調しつつ、発熱のみだった症状が、死を意識するほどの肺炎にまで発展し「コロナの恐ろしさを痛感した」と振り返る。
(随時掲載)