苫小牧20代女性 味がしないいつものコーヒー いつ自宅に不安募る、札幌で4泊5日ホテル療養

  • 新型コロナ感染者に聞く, 特集
  • 2021年2月23日

 苫小牧市の20代女性は、普段のように仕事をこなしながら熱っぽさを感じていた。体温を測ったが微熱。風邪薬を飲んで一晩休むと、熱は下がって体調も良くなった。少し気になる程度の鼻詰まりはあったが、通常通り出勤する日々が続いた。

 そんなある朝、職場でいつも飲むコーヒーの味がしなかった。他に体調の異変はなかったが、大事を取って仕事を早退。病院に電話相談すると、返答は「感染の可能性は低いが、念のため検査を受けてほしい」だった。市内で検査を受けた翌日、新型コロナウイルス感染が判明した。

 2日後に札幌市内のホテル療養施設に入った。その日の朝、検温すると38度の発熱。洗濯ができないことを考え、多めに着替えを用意した。送迎車両で別の感染者女性2人と相乗りしたが、道中は倦怠(けんたい)感や体の痛みでつらかった。ホテルには裏口から入り、透明のパーティション越しに、担当者からそこでの過ごし方などについて説明を受けた。

 部屋に入ると、看護師らとのやりとりはすべて電話。体調が悪化すれば病院へ行くこともあり得ることや差し入れは原則禁止といった注意事項、食事の受け取り方などを改めて教わった。毎日計測する体温や血中酸素の値は、携帯電話を使ってオンラインで報告した。

 女性はホテル生活2日目まで「感じたことのないだるさ、つらさがあった」と振り返る。体調が優れない中、自身の状況を逐一報告しなければならないのは「かなり負担だった」と言う。一方で「管理してくれた人も大変」と医療従事者やスタッフらの労苦に思いをはせた。

 食事は弁当が用意されたが小麦粉アレルギーのため、手を付けられなかった。ホテルにアレルギー対応食はなかったが、担当者に相談すると毎食おにぎりを2個用意してくれた。味覚障害は続いた。全く味がしないというわけではないが、「苦いものを苦い」などと認識できる程度だった。

 ホテルの1室という狭く、密閉された空間での生活が続き、「いつ自宅に戻れるのか」とストレスがたまった。体調は3日目から徐々に回復したが「また熱が上がればホテル生活は延長される」と精神的なプレッシャーを強く感じた。

 その後、体調が安定したため、ホテル療養は4泊5日で終了。自宅にはJRを使って帰宅した。この間の自己負担はその電車代のみだった。自宅に帰ってからも頭痛や下痢に見舞われ、体重は2キロほど落ちたが、翌日から職場に復帰した。

 同僚たちも念のため、検査を受けた結果、全員陰性。事情を知るだけに、職場は温かく迎え入れてくれた。感染前の生活を取り戻したが、自身が感染したことはやはり他人には言いづらい。たまたま知人に「しばらくだね」と声を掛けられた時も、どう思われているのかを気にし、感染していた事実は打ち明けられなかった。

 女性は普段1人暮らしで、年末年始も外出を最小限にとどめていた。そんな中での感染に「医者でも判断が難しい病気」であることを再認識するとともに、感染者へのケアの必要性を強く実感。「検査してもらえるタイミングがあるなら、積極的に受けるべき。知らないうちにばらまいてしまわないよう検査体制の充実も必要」と語る。

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 新型コロナウイルスの感染者が胆振管内で初めて確認されてから、22日で1年が過ぎた。未知の病気も人ごとではなくなる中、感染した人がどのような思いを抱き、どんな症状や誹謗(ひぼう)中傷などに苦しめられたのか。回復して社会復帰した市民の体験談を随時、紹介する。

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