「最近になって感染者が増えている。これからオンライン診療の希望は増えるかもしれない」―。とよた腎泌尿器科クリニック(苫小牧市元中野町)の豊田健一院長はそう予想する。無料通信アプリLINE(ライン)を使ったオンライン診療サービス「LINEドクター」の導入を準備中。新型コロナウイルス禍で外出を控える患者の安心と利便性向上に目を向ける。
◇
インターネットや電話による「オンライン診療」。コロナ流行前は初診が原則対面だったが、4月に国は「時限的特例措置」として規制緩和した。初診からオンライン診療が可能になり、処方薬も患者宅に配送できるようになった。コロナの感染拡大、院内感染を防ぐためにも有効で、菅義偉首相は10月の所信表明演説で、デジタル化による利便性向上も含め、オンライン診療の恒久化を掲げた。
とよた腎泌尿器科クリニックは「第1波」を迎えた3月から電話診療を展開してきた。通院患者から「(コロナで)怖くて病院に行けない」「薬だけ出して」といった声を受けて決断。当初は電話診療を1日1件ペースでこなしたが、豊田院長は「患者の安心のために対面で診たい」と基本姿勢を強調する。
ビデオ通話の診療も検討したが、決済システムの適用範囲が狭くて断念するなど、より良い医療の提供を模索している。ライン診療の導入に向けて「ラインであれば高齢者も孫との交流などに結構使っている。スマホはカメラも付いているし、無料電話もできる。決済の面でも楽」と期待。アプリ運営会社に申請手続きを済ませた。
一方、東胆振でオンライン診療を本格的に導入する動きは一部にとどまっている。4月の規制緩和に合わせた厚生労働省のまとめでは、苫小牧市内のオンライン診療対応は7医療機関のみ。環境不十分や安心確保などを理由に、二の足を踏む医療機関は多い。
特に高齢者を中心に受け入れる市内の病院関係者からは「採血などをしないと症状を把握できない。電話診療もしていない」「インターネット環境がない高齢者は多い」「患者が成り済ましの詐欺などに遭わないか心配」などと否定的な声も上がる。
精神科や心療内科を担う苫小牧緑ヶ丘病院(清水町)もオンライン診療の導入を検討したが、本格的な活用には至らなかった。再診に限って電話診療を行うが、同病院は「病状が安定している電話診療の対応のみで、来院してもらうことが基本」と説明。コロナ禍の新たな診療システム構築へ試行錯誤が続く。