《3》 高度な医療機能を維持 市立・王子両病院 連携深め地域支える

  • 検証コロナ禍 医療編, 特集
  • 2020年11月19日
搬送後の救急車内を消毒する救急隊員。コロナ対策と2次救急の両立に危機意識は高い

  5日に苫小牧市立病院で、12日に王子総合病院でそれぞれ、医療従事者が新型コロナウイルスに感染したことが判明した(日付は道公表に基づく。王子は16日にも感染者)。幸いにも院内で感染が広がることはなく、通常通り入院や外来、救急診療を続けているが、関係者の緊張感は一気に高まった。

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   両病院は東胆振の二大医療拠点。「有事の際」でも機能の維持が至上命令で、地域医療関係者らと常に協力しながら、課題の解決に当たってきた。コロナ禍にあっても、2月下旬に胆振管内で感染が確認される前から、対策を徹底的に講じつつ連携を深めてきた。

   入院などが必要な救急患者を24時間体制で受け入れる2次救急は、両病院が輪番制を敷いているが、市立は東胆振唯一の指定医療機関としてコロナ対策が集中する。輪番体制自体を変えたことはないが、王子が非当番日に積極的に急患を受け入れたこともあった。

   市立の急患受け入れは2019年度の年間5000人以上に対し、20年度上半期(4~9月)は2000人以下だ。市立の佐々木薫事務部長は「感染症より救急の方が件数は多い。そういう意味では王子さんに助けてもらった日の方が多い」と感謝する。

   赤ちゃんの出産前後の周産期医療も両病院が東胆振で重きをなし、特殊な治療などに対応する新生児集中治療室(NICU)は市立にしかない。市立は長距離移動による感染リスクの高さを考慮し、里帰り出産を可能な限り控えるよう呼び掛けるなど、苦渋の対応を余儀なくされている。

   いずれも高度な医療機能を維持し、地域住民に提供し続けるため、常にコロナと向き合った結果。特に感染症病床を抱える市立は動線を分離し、一般の入院や外来との接点を遮断。面会も2月下旬以降は原則禁止とするなど、緊張感を持って対応を続ける。

   室内の空気が外に漏れない病床を設け、一般病床の一部を休止したり、新規患者の受け入れを制限したり。医療資材が全国的に不足した春先、感染拡大の先行きも不透明だったが、マスクなど一般病棟の在庫が不足がちになっても、院内の感染対策に資材を集中させた。

   そんな高い危機意識と知見に基づき、対策に手を尽くしてきた病院の医療従事者からも、感染者が出るのが今のコロナ禍。感染経路は不明とあって衝撃も大きい。関係者は「院内での感染拡大がないよう、さらに緊張感を持って取り組まなければならない」と口をそろえる。地域医療に支障を来さないため、やるべきことをさらに徹底しながら感染防止に向き合う日が続く。

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