この国が超高齢社会になって、10年以上になる。今や介護が必要と認定された人は約668万人、介護が必要な人が家で待っている会社員は約300万人はいるとされている。
仕事と介護を両立させる制度や法律はできており、内容は徐々に良くなっている。例えば介護休業(対象者1人につき、通算93日まで)を3カ月取って職場復帰し、その後、必要に応じ介護休暇(同、年5日まで、2人以上なら10日まで)を取得できたりする。
当然、介護中の会社員の助け船として利用されていそうだが、そうではない。東京・富士通マーケティングによる調査(2015年、介護をしている会社員200人に実施)では、約9割が「制度を使用していない」と答え、最も多かった理由は「仕事が忙しくて休めないから」だった。制度はあっても使える職場環境にないのだ。
医療介護機関が介護に関する説明をしたり相談に応じる時間は、会社員の勤務時間と重なっている。会社を休んで足を運ぶことができれば、介護の道筋を決めて働く見通しを立てられるが、できないから「仕事か介護か」の選択に迫られて離職する。介護離職者は、8年ほど前から毎年約10万人いると明らかなのに、今後も職場環境は見過ごされたまま内容の改革だけが進められるのだろうか。
ちなみに現在半日単位で取得できる介護休暇は、来年から時間単位で取れるようになる。(林)