人口10万人当たりのがん死亡者数(がん死亡率)が新聞で報道されていた。北海道は、47都道府県では最も死亡率の高い青森県に次いで2番目だった。
国立がん研究センターが集計した。2018年の全国平均は71・6。北海道は、1位青森県の91・1より約10ポイント少ないものの、全国平均よりは10ポイント多い81・6。北海道は、がん対策に関しては後進地域らしい。男女別に見ると男性が99・8、女性66・1だった。心構えの必要性を考えさせられた。
10万人に100人、1万人なら10人、千人に1人―。がんに倒れた身内や知人の数を、頭の中で改めて数えてみる。片手の指の数は超えた。その一人ひとりの病室の様子や、交わした冗談を覚えている。もう10年以上前のこと、心の準備もなく、担当医の病状説明に立ち会ったことがある。「手術が不可能な、無数の小さな転移があります―」。そんな説明だった。趣旨は分かったが、それを聞く本人の顔を思い出せない。つらくて正視できなかったのだと思う。
テレビで、自らもがん患者となり、手術の痛みや検査の怖さを経験したという、がん緩和ケア担当医師の記録を見た。「思い残すことはない」と話す高齢の女性に、優しい表情で話し掛けていた。8年前の冬、死の数日前に見舞った身内の、鼻や額が傷だらけだったことを思い出した。転倒して顔をぶつけた跡だ。がんは、見栄も強がりも許してくれなかった。(水)