道は10日、昨年末に新千歳―フィンランド・ヘルシンキ線に新規就航したフィンランドの航空会社フィンエアーの貨物室を活用し、欧州へ道産食品を輸出する実証実験を開始した。本州などに比べて本道から短時間で直送できる欧州路線で荷主の需要を調べ、今後の輸出振興や支援の施策に生かしたい考え。同日に1回目を行い、貨物コンテナの搭載作業を公開した。
道総合研究調査会(札幌市)に委託した国際航空貨物輸出促進実証事業としては2012年2月に香港路線で展開して以来2回目の取り組み。欧州路線で初の今回は約1000万円の予算で、2月まで3回実施する。
欧州へ道産食品を輸出する荷主から道が集荷し、借り上げたフィンエアー機の貨物室に入れて空輸する。実証実験段階では、荷主は空輸で生じる費用を負担せず無料で利用できる。
新千歳―ヘルシンキ線は19年12月17日に週2往復で就航。当初は冬季限定の運航予定だったが、通年運航に拡大した。
本道と欧州の直行路線は02年に廃止されたオランダ・アムステルダム線以来17年ぶりの復活で、道産品の輸出需要は未知数。事業を通して荷主や現地関係者の意向を確かめ、1次産業や経済など道の関連部署とも協力して欧州市場開拓の可能性を探る。3月末まで調査を続け、20年度以降に具体的な荷主への支援策をまとめる。
10日の初便(エアバス330型機)では、みそ、のり、シイタケといった8社の30品目を運んだ。ヘルシンキからはイタリア・ミラノの業者に運び、販売される。道の就航記念訪問団が21日にヘルシンキ市内で開く記念行事に供する道産米や日本酒、ホタテといった品々もコンテナに積んだ。
同路線の片道所要飛行時間は約9時間。道によると、成田や関西の両空港を利用するよりヘルシンキ行きで1時間短い利点があるという。使用機材はヘルシンキ到着後、英国に向かうため、将来的には欧州全体への需要波及に期待する。道の目標は23年までに食品輸出額年間1500億円。
担当の道航空課は「本道と欧州を結ぶ最短最速の路線が誕生した」としており、生産者や食品加工会社などには「5億人の欧州市場へのビジネスチャンス。ぜひ前向きに捉えて、利用してもらいたい」と呼び掛けている。