メンバー全員が本道出身のロックバンド「怒髪天」のボーカルで、千歳にゆかりがある増子直純さん(53)=札幌市出身=が、NHKで放送中の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(毎週日曜午後8時から、NHK総合ほか)に出演する。3日放送の41話以降で日本映画界の巨匠、故黒澤明監督役を演じる。「考えていることや言っていることが大きい役で、すごく面白かった」と増子さんは収録を振り返る。
増子さんは、航空自衛隊員として千歳基地に約1年間在籍していたことがある。少しでも多くの人に怒髪天の音楽が届くきっかけになれば―と積極的にワイドショー番組などテレビ出演を行ってきたが、NHK大河―への出演は初めて。
ドラマは、俳優や放送作家、音楽活動など幅広く活躍する宮藤官九郎氏の脚本。日本が初めて夏季五輪に参加した1912年のストックホルム(スウェーデン)五輪から、64年の東京五輪開催までの舞台裏を支えた人々を描き、日本の近代スポーツ史を振り返るストーリー。
五輪記録映画の監督に決定したものの、五輪招致に尽力し、信頼する田畑政治(阿部サダヲさん演)が組織委員会を去り、自身も辞退する黒澤役を増子さんが演じる。
収録で印象深かったのは、「階段を下りるシーン」と言う。演出の担当者から、悠然と下りてくることを求められたが、「階段を堂々と下りることなんてないから、大変だった」と振り返る。再現したセットの階段に滑り止めはない。「自分から『もう1回』とやり直しを申し出たこともあった」
また、出演に当たって、親交があるロックミュージシャンで俳優の吉川晃司さんにアドバイスを求めたことも。吉川さんは、歌と芝居では、発声や使う筋肉などが異なり「音楽の経験から引き出せる物はほとんどない」と指摘。芝居では「慣れるより習えで(スタッフに)いろいろと聞いた方がいい」と話したという。増子さんは「自分流にやればそれでいい、ということを言わない。やっぱりさすが」と敬意を払った。
本業のバンドは、今年で結成35周年の節目を迎える。「(結成)30周年のときは、武道館アーティストになって、今度は大河俳優になった」と笑う。「長くやっていれば、こういうご褒美のようなおまけが付いてくることは面白い」と目を細める。
「いだてん」は、最終章を迎えているが「歴史的な物としてだけではなく、人の生きざまが垣間見えるドラマ」とPR。来年は、56年ぶりに東京五輪を控える。実在した人物のさまざまな思いが絡んだ筋立てだけに「すごく闘っていた人たちがいると思うと、思いもひとしお」と感慨深げだ。
増子直純(ますこ・なおずみ) 札幌市白石区出身。本道出身者4人組のロックバンド「怒髪天」ボーカル。怒髪天は、増子さん、清水泰次さん=千歳市出身=、上原子友康さん=留萌市出身=、坂詰克彦さん=上川管内幌加内町出身=で構成。
今年で結成35周年を迎え、新曲2曲と吉川晃司さんやスガシカオさんら総勢200人が参加したトリビュート音源「オトナノススメ~35th愛されSP~」などを収録した35周年記念盤「怒髪天」(CDのみは、税込み1980円)が販売中。