胆振東部地震から1年がたち、道は厚真、安平、むかわ、日高、新ひだかの5町で、災害復旧計画の9割以上に当たる155カ所で事業に着手したことを明らかにした。2020年度末までの工事完了を目指す。人手不足で入札が成立しないケースもあり、計画通りの進展に懸念も残るが、「一日も早く復旧工事を完了するため頑張りたい」としている。
室蘭建設管理部によると、災害復旧事業は5町の河川や道路、橋梁(きょうりょう)、漁港の164カ所(8月末時点)、発注予定額は265億円に上る。6日までに着手した工事は計画の94・5%に当たる。
最も被害が大きかった厚真町でも、急ピッチで工事が進む。土砂崩れで稼働を停止している富里浄水場では、周辺の傾斜地や堆積していた土砂を撤去し、斜面に格子状の型枠と鉄筋を配置する斜面対策工事を行っている。7月からはポンプや沈殿施設などの修繕を始めており、20年8月の供用開始を目指す。
幌内の日高幌内川では、地震で長さ約800メートル、幅約400メートルの土砂が地滑りを起こし、川をせき止めて土砂ダムが発生していたが、ポンプで排水作業を行い、330万立方メートル(札幌ドーム2杯分)の土砂の埋め立て場所を確保する。これまで浜厚真地区へ運んでいた土砂の運搬時間の短縮、市街地の渋滞緩和を見込む。幌内地区の農地に設置している土砂の仮置き場からも運搬し、21年度に営農が再開できる見通し。
東和の緊急治山工事は、余震や降雨によって流出の危険が高い土砂を撤去し、山腹で土留め工事やのり枠工事を実施している。高丘の農地と農業用施設復旧工事現場では、8月までに倒木や土砂を撤去した。
同部の通岩公地域調整課長は「入札の不調は懸念材料だが、9月と10月に発注する工事をうまく乗り越えたい」と話している。
森林再生に向けても作業が続く。胆振総合振興局林務課のまとめによると、厚真、安平、むかわを中心に道内の林業被害は564カ所、511億円の被害額が見込まれるが、被害面積4302ヘクタールのうち91カ所の工事を発注した。