緊急自動車のサイレンの音からは感情が伝わる。脇道に隠れて一時不停止に目を光らせるパトカーはウーウーと怒って走り出す。パーポーパーポーという救急車のサイレンが悲しげに聞こえるのは年齢のせいだろうか。助けて、助けて。待ってろ、待ってろ。そうも聞こえる。
苫小牧市内の住宅街に住むAさん宅付近に先日、救急車や救急隊員、パトカーや警察官らが集まって騒然となった。目指した家は高齢者の独り暮らし。何があったのか。住人はどうなったのか。ストロボを光らせ、小走りで屋内を調べる隊員の様子を近所の人たちが見守った。
人口減少や高齢化は農漁村の問題と捉えられがちだ。しかし、小都市の住宅街だって状況は変わらない。育った子どもは故郷を離れて就職し、残った親は老いて、どちらかが亡くなればやがて独り暮らしが始まる。「近くに住もう」と娘や息子は言う。しかし都市は間取りも家賃も地方の高齢者が転入しやすいようには設定されていない。検討はされても行動にはなかなか結び付きにくい。住宅街の小路を1、2本歩けば寂しげな独り暮らしの家や空き家の増加がすぐ分かる。
早朝や夜に救急車のサイレンが聞こえると耳を澄ます。「通り過ぎた」。2階から確認した家人の連絡に一安心。(水)