文化の振興や伝承など5本柱 アイヌ施策 基本方針素案 中長期的方向性示す 白老

  • ニュース, 白老・胆振東部・日高
  • 2021年10月27日

 白老町は、今年度に改定するアイヌ施策基本方針の素案をまとめた。白老に息づくアイヌ文化を振興し、後世に引き継ぐための中長期的施策の方向性を示した。アイヌ民族を先住民族に位置付け、尊厳の回復をうたった新法の趣旨も反映した新たな基本方針を来年1月に策定する。

 素案では、重点施策の方針として▽アイヌ民族の歴史と文化を正しく認識し、尊重する社会の創造▽白老のアイヌ文化の振興と伝承▽アイヌ民族の歴史や文化に関する教育の振興▽産業の振興と生活環境の充実▽アイヌ民族に関する行政の総合的推進―の5本柱を明示。これに基づく施策の方向性や今後取り組むべき課題を示した。

 歴史と文化の認識・尊重に関する施策では、アイヌ文化の発信や民族共生象徴空間(ウポポイ)を核とした誘客促進、文化振興の人材育成といった現状の事業に加え、アイヌ民族と国外先住民族の交流促進なども盛り込んだ。白老アイヌ文化の振興については、新たな施策の課題としてアイヌ語や口承文芸、古式舞踊、伝承的食文化の研究・保存・伝承活動の推進を示した。

 教育の振興では、教育関係者や行政職員を対象にしたアイヌ文化研修の充実などを示し、産業振興・生活環境の充実についてはアイヌ文化商品開発の推進や知的財産管理体制の構築、生活相談体制の充実を盛り込んだ。アイヌ民族に関する行政の総合的推進に向けては、白老アイヌ協会と白老モシリ、白老民族芸能保存会の地元アイヌ関係3団体の連携強化、各団体の一元化を課題として示した。

 白老町の基本方針は、アイヌ民族と深い関わりのある町として全国の自治体に先駆けて2007年度に策定。アイヌ文化振興と伝承の推進など重点施策を掲げて事業を進めた。一方、アイヌ施策推進法の制定(19年度)、白老町での文化復興発信拠点・民族共生象徴空間開設(20年度)など、アイヌ民族をめぐる政策的環境が大きく変化。法的に初めてアイヌを先住民族に位置付け、差別禁止も示した新法の趣旨が現行基本方針に反映されていないことから、町は見直しを図ることにした。

 改定に向けて町は6月、アイヌ関係団体や商工会、観光協会、仙台藩白老元陣屋資料館など各団体代表や関係者ら12人で構成する検討委員会(委員長・岡田路明北洋大客員教授)を設置。新たな基本方針について検討を進めている。

 町は、今回の素案に基づいてまとめた計画原案について11月下旬に検討委に示し、来年1月の決定を目指している。

【素案で示した主な施策の方向性】

●アイヌ文化振興の基盤づくり

●伝統工芸の振興

●文化伝承団体への支援

●アイヌ民族と国外先住民族の交流

●歴史や文化に関する教育の充実

●アイヌ文化を核とした産業振興

●地元アイヌ関係団体の連携強化

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