文化観光の可能性に期待 講演やディスカッション 白老でセミナー

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  • 2021年10月23日

 白老町で展開中の文化芸術プロジェクト「白老文化芸術共創」の一環として21日、文化観光をテーマにしたセミナーがしらおい創造空間「蔵」で開かれた。集まった町民は、専門家の講演や地元商業者らのディスカッションを通じ、文化芸術と観光を組み合わせた文化観光の意義や可能性について理解を深めた。

 セミナーは、白老文化芸術共創プロジェクトを企画した白老文化観光推進実行委員会(会長・熊谷威二白老町商工会長)が主催。第1部では、同志社大学教授で文化政策研究者の太下義之氏が「多文化共生のまちづくりと文化観光施策の可能性」を演題に講演した。

 国の文化施策に深く関わっている太下教授は、地域の歴史や文化を観光客に楽しんでもらう文化観光について詳しく解説。体験型観光のニーズが高まる中で、国も2020年5月に「文化観光推進法」を施行し、地域の文化観光促進へ動き始めた状況を話した。

 また、国内各地の文化観光事例を紹介。過疎の小さなまちが現代アートの観光地づくりや芸術祭を導入したことで世界中から人々が集まるようになり、地域が活性化したケースなどを説明した。

 さらに白老町がまちづくりスローガンとして掲げる「多文化共生」に関し、「クリエーティブなちょっと変わった人など、多様な人たちを受け入れる寛容性が地域を豊かにする」と述べた。

 第2部のディスカッションでは太下教授、大町商店街でカフェ・雑貨店を営む佐々木美保さん、白老商業振興会理事長の村上英明さん、国立アイヌ民族博物館職員の谷地田未緒さん、虎杖浜の観音寺住職の米本智昭さんが文化観光をめぐって討論。佐々木さんは「地域の文化資源を大切に守り、生かしていくことが重要ではないか」と指摘し、村上さんは「文化観光の取り組みでまちを元気にし、人口減に少しでも歯止めがかかれば」と期待した。

 海外生活の経験を持つ谷地田さんは「いろんな場所で暮らしたが、多文化の白老は世界中で一番面白いまちだと思う。外から見えるまちの魅力に地元が気付き、それを生かしてどんどん面白くしてほしい」と訴えた。

 米本さんは、虎杖浜の昭和の風景写真を地域に飾った屋外写真展(ウイマム文化芸術実行委員会など主催)を取り上げ、「今月11日まで開かれた写真展に町外からたくさんの人が鑑賞に訪れた。住民も地域に誇りを抱く取り組みとなった」と話し、地域活性化をもたらす文化観光の力を強調した。

 最後に太下教授は「アートで地域の魅力づくりを進め、人口が増えた地域もある。住民の郷土愛も高める文化観光に挑戦してほしい」と呼び掛けた。

 セミナーには町の理事者や職員、町議会議員、文化活動の関係者や一般町民ら約50人が集まり、講演や討論に耳を傾けた。

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