恵庭アイヌ協会(藤原顕達会長)は5日、恵庭市盤尻の漁川源流域の「本流の岩屋」(国有林内)でヒグマを慰霊する伝統儀式「シラッチセカムイノミ」を厳かに営んだ。
シラッチセはアイヌ語で岩屋、岩陰のこと。約4万2000年前の支笏火山の火砕流堆積物で形成された溶結凝灰岩の岸壁上部がひさしのように張り出した所。狩り場が集落(コタン)と離れた場所にあり、狩猟時は雨雪がしのげる岩屋で野営し、春先は冬眠中のクマを狩り、その場で解体。頭骨を山の神として岩屋の祭壇(ヌササン)に祭り、カムイを天界に帰す儀式(カムイイオマンテ)を営み、岩屋を「熊送り場」として繰り返し利用してきたという。
恵庭に現存する送り場は、本流の岩屋を含め3カ所。ササやぶをかき分け、倒木を乗り越えた先に鎮座する。恵庭アイヌ協会は、千歳アイヌ協会(中村吉雄会長)の協力で「シラッチセカムイノミ」を2012年に復活。以来、年に1度、本流の岩屋で儀式を営んでいる。
この日は、民族衣装をまとった藤原会長が祭壇にイナウ(木幣)やオハウ(汁物)、サケ、穀物を供え、アイヌ語で祝詞を上げた後、千歳アイヌ協会の中村会長ら出席者9人が順にイクパスイ(捧酒箸)でトノト(酒)と祈りをささげた。
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止で出席者を最小限に抑えたという。儀式を終えた藤原会長は「先祖が引き継いできた神聖な儀式を絶やさずに実現できた。コロナ禍の終息も祈願した」と安堵の表情で語った。