先日、仕事帰りに友人と札幌・大通公園を歩いた。風物詩の「ホワイトイルミネーション」が、きれいだった。今年も3週間余りで、過ぎ去ろうとしている。
そんな師走。ルポライター、谷充代さんの「高倉健の図書係―名優をつくった12冊―」(角川新書)を読んだ。谷さんは健さんの「図書係」の役目を長年、任された。「おはよう。探してほしい本がある」―。いつも午前11時前後に、健さんからこう電話があったという。
健さんは読書家だった。きっかけは駆け出し時代、出演した作品で出会った巨匠、内田吐夢監督の言葉。「時間があったら活字(本)を読め。活字を読まないと顔が成長しない。顔を見れば、そいつが活字を読んでいるかどうかわかる」
これだと思った一冊をボロボロになるまで、繰り返し読んだ。山本周五郎の「ちゃん」、池波正太郎の「男のリズム」…。藤沢周平の「蝉しぐれ」には「何が美しいかということ。金ではない、力でもない、まして物でもない。人が人を想う、これ以上に美しいものはない」と後年、この小説への心情を打ち明けた。
映画のため、自分のために読み続けることが孤高のスターの源泉だったのかもしれない。健さんが天国に旅立って、11月10日で10年の歳月が流れた。(広)