登別温泉 ホテル徐々に再開 厳しい状況続くも前向く

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  • 2020年6月3日

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で深いダメージを負った国内有数の温泉地・登別温泉の観光業界は、政府の緊急事態宣言解除を受けて今月から復興へ動きだす。訪日外国人など観光客の激減で臨時休業を続けていた主要ホテルは1日から順次再開し、自粛緩和をばねに需要回復を目指すものの、「ウイルス感染が終息しない限り、今後も厳しい状況が続くのでは」とみる関係者は多い。

 野口観光(本社登別市)は1日、新型コロナ感染拡大に伴い4月から休業していた登別石水亭など道内外21宿泊施設の営業を再開した。客のチェックイン時には検温などで体調を確認し、夕食のバイキング会場は密にならないよう時間を分けて受け入れるなど感染防止対策を徹底。宿泊客に安心して利用してもらう態勢を整えて再始動した。

 同社のほか、ホテルゆもと登別も同日から再開。トーホウリゾート(本社札幌)が運営するホテルまほろばは12日から、旅亭花ゆらは13日からそれぞれ再び営業を始める。登別万世閣は20日から営業を予定。登別グランドホテル、第一滝本館の老舗ホテルは18日まで休館した後、再開する方針だ。

 温泉街にある地獄谷や泉源公園など観光スポットの立ち入り規制も1日に解除。観光案内所も再開した。温泉街通りでたこ焼き店の再開準備に当たっていた永森博昭さん(66)は「ホテル客がいないと、うちも駄目。お客さんが戻って来ればいいね」と話した。

 登別温泉のホテルは、3月から4月にかけて次々に臨時休業に入った。感染拡大を背景とした外国人の国内受け入れ制限や、外出自粛を求める政府の緊急事態宣言で宿泊客が急減したからだ。

 登別国際観光コンベンション協会によると、落ち込みが際立ってきた3月から5月にかけた各ホテルの売り上げは「前年比で9割減」と前代未聞の事態に陥った。だが、感染の広がりはひと頃より落ち着き、5月25日の緊急事態宣言の全面解除や自粛緩和を受けて、登別温泉の各ホテルもようやく動き始めた。

 政府は19日以降、状況を踏まえて都道府県をまたぐ移動自粛を緩和し、観光再生を後押しする政策も打つ構えだ。そうした動きに登別温泉の各ホテルは期待を寄せつつも、決して楽観視していないのが実情だ。野口観光は「再開初日の当社ホテルの宿泊者はわずかな人数にとどまった。しばらく厳しい状況が続くだろう」とみる。有効な治療薬やワクチンの開発はまだ先となり、感染不安も当面消えない中で「すぐには旅行需要は回復しないのではないか」と推察する。特に登別温泉の場合、感染防止対策で6~7月の鬼花火や8月の地獄まつりが中止になるなど、メインの集客イベント取りやめによる影響も必至だ。

 登別市は基幹産業の観光業復興に向けて今月、ホテルや温泉街の商店などで使える商品券を発行する計画。国も「GoTo(ゴートゥー)キャンペーン」と銘打って宿泊料などが割引きとなるクーポン発行事業を早ければ7月にも開始するが、「目に見えないウイルスへの恐れが続く中、どこまで効果が出るだろうか」と懐疑的にみる関係者は少なくない。さらに年間120万人の宿泊利用者の3割以上を占め、登別観光を下支えした外国人観光客が温泉街へ戻って来る時期も見通せず、トーホウリゾートの唐神昌子社長は「1年後になるかもしれない」と予測。「まずは地域や国内の需要回復に力を入れていきたい」と言う。

 国内で感染の再流行も懸念される中、登別国際観光コンベンション協会の大野薫専務は「ウイルスの存在を前提とし、人との接触をなるべく避けて感染を防ぐ新しいシステムをどうつくるか。それが今後の観光業界の課題だ」と指摘する。

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